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1 はじめに
2015年12月に施行された労働安全衛生法により、労働者50人以上の事業場は、毎年1回のストレスチェックをすべての労働者に対して実施することが義務付けられました。従業員の心の健康はもちろん、企業の安定した経営のためにもメンタルヘルスケアの実施は欠かせないものであり、精神疾患を発症してしまった場合も、職場復帰支援などの措置を講じることが大切です。
ここでは、メンタルヘルスケアの現状や、実施するにあたってのポイントをご紹介します。
2 職場におけるメンタルヘルスケアの現状
まずは、職場における精神障害などに対する労災補償と、メンタルヘルスケアに取り組む事業所の割合について見ていきましょう。
●精神障害などの労災補償状況は?
厚生労働省の調査によると、1999年に精神障害などの判定基準が策定されてから、精神障害などの労災補償の請求件数は増加の傾向にあります。
2000年には請求件数が212件(認定件数は36件)でしたが、2013年には1,409件(認定件数は436件)と大きく増加しています。
※出典:厚生労働省HP 労働基準局安全衛生部労働衛生課「職場におけるメンタルヘルス対策の推進について」
●事業所におけるメンタルヘルスケアへの取組状況
精神障害などの労災補償件数の増加に伴い、メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所の割合も、徐々に増加傾向にあります。2002年には23.5%だった事業所の割合が、2007年には33.6%、2012年には47.2%となっています。
厚生労働省の「第12次労働災害防止計画」では、2017年までにメンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所が80%に達することを目標としていました。しかし、2016年時点で56.6%にしか上昇せず、「第13次労働災害防止計画」では、再度取り組んでいる事業所の割合を80%以上にすることを目標としています。
「必要を感じない」「専門スタッフがいない」「取組み方がわからない」といった理由から、メンタルヘルスケアの実施に至らない事業所が多いようです。
それでは、今後メンタルヘルスケアに取り組む場合のポイントをあげていきましょう。
3 職場のメンタルヘルスケアにこれから取り組みたい場合
これから社内のメンタルヘルスケアに取り組みたいという場合は、厚生労働省が定めた「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を参考にするといいでしょう。また、併せて「労働安全衛生法」などの法令で義務化されている、事業者の社会的責任も知ることが大切です。
メンタルヘルスケアを実施するにあたっては、国や各種団体の支援や助成制度もあります。上手に活用することで、従業員の心の健康を守りましょう。
4 実施したいメンタルヘルスケア
厚生労働省は「過重労働による健康障害防止のための総合対策」を2006年に策定し、改正を行ってきました。この対策は、事業者が過重労働による脳や心臓に関わる疾患や精神障害などの健康障害を防止することを目的としています。事業者がまず講じるべきメンタルヘルス対策の措置は、次の4点となっています。
- 時間外・休日労働時間の削減
- 年次有給休暇の取得促進
- 労働時間等の設定の改善
- 労働者の健康管理に係る措置の徹底
最後の「労働者の健康管理に係る措置の徹底」としては、次のような対策が挙げられます。
- 産業医の選任時における、健康管理体制の整備
- 健康診断および健康診断後措置の実施
- 長時間にわたる時間外・休日労働を行った労働者に対する面接指導
- 過重労働による業務上の疾病を発生させた場合の原因の究明および再発防止の徹底
なお、長時間労働者との面接指導を行った事業者は、その結果を踏まえて休暇の付与や作業の軽減といった事後措置を行います。そうすることで、過労死や過労自殺等の未然防止や早期発見・早期治療に効果が期待できます。
5 ストレスチェック制度について
労働安全衛生法の改正により、ストレスチェック制度が創設され、従業員50人以上の事業場について、事業者はストレスチェックの実施を義務付けられました。労働安全衛生法のストレスチェックは、労働者の心理的な負担がどの程度なのかを把握するための、医師や保健師等による検査です。従業員50人未満の事業場については、「当分のあいだ努力義務」とされています。
事業者は、ストレスチェックの検査結果を通知された労働者の希望があった場合、医師との面接指導を実施し、必要に応じて作業内容の転換や労働時間の短縮、そのほか適切な就業上の措置を講じる必要があります。
6 おわりに
メンタルヘルスケアの現状と実施のポイントについてご紹介しました。メンタルヘルスケアは、事業者の社会的責任でもあり、従業員の健康を確保するためにも重要な課題のひとつです。
国や各種団体の支援・助成制度も活用しながら、従業員のストレス軽減や職場環境の改善に努め、活気のある職場づくりをしていきましょう。
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