中小企業に求められる子育て・介護・病気治療と仕事の両立支援とは?
少子高齢化により労働人口が減少している中で、企業が成長を続けていくためには、従業員が安心して働ける環境づくりが重要です。政府もこの分野を重要視しており、「中小企業のための育児・介護支援プラン導入支援事業」や「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」の制定、「介護離職ゼロ」の目標など、さまざまな取り組みが進んでいます。
ここでは、中小企業に求められる、子育て・介護・病気治療と仕事の両立支援についてご紹介します。
子育て・介護・病気治療と仕事の両立支援の現状
従業員が安心して働くために企業に求められる環境整備は、大きくは「子育て支援」「介護支援」「病気治療支援」の3分野に分けられます。それぞれについて、現状を解説しましょう。
子育てと仕事の両立支援
子育て支援は、1992年に育児休業法が制定されると、早くから各企業で制度整備が進められてきました。そのような効果もあってか、出産前に就業していた女性が、第一子出産後に退職する割合は、1985~2009年頃までは約40%前後でしたが、2010~2014年になると33.9%と減ってきています。また、2019年の育児休業の取得率は、女性83.0%、男性7.48%でした。
出典:「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」(国立社会保障・人口問題研究所)
出典:「令和元年度雇用均等基本調査」結果を公表します ~女性の管理職割合や育児休業取得率などに関する状況の公表~」(厚生労働省)
介護と仕事の両立支援
2017年の介護離職者は約9万人に達しており、2007年の介護離職者が年間約5万人だったことを考えると、2倍近くに増えています。
このように、介護離職者が増えている状況ですが、残念ながら中小企業における介護と仕事の両立支援制度の整備は、大企業に比べて進んでいません。例えば、2017年のデータでは、30人未満の事業所で「介護休業制度」「介護休暇制度」「短時間勤務制度」といった介護支援制度の規定を設けているのは、5~7割しかありません。また、介護支援制度があったとしても、その利用率は100人未満の事業所では、1割にも届いていないのが現状です。
病気の治療と仕事の両立支援
がんなどの病気の治療と仕事の両立についても、病気を抱える労働者の92.5%が就労の継続を希望し、現在仕事をしていない人でも70.9%が就労を希望しています。
このように、病気の治療と仕事の両立支援の環境整備は、企業に強く求められているといえるでしょう。
出典:「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」(国立社会保障・人口問題研究所)
出典:「令和元年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)
出典:「平成29年就業構造基本調査 結果の概要」(総務省)
出典:内閣府ホームページ(https://www.cao.go.jp/)
「介護離職の現状と課題」(株式会社大和総研)
出典:「治療を受けながら安心して働ける職場づくりのために」(厚生労働省)
中小企業が子育て・介護・病気治療と仕事の両立支援を進めるメリット
中小企業は、大企業のように資金や人的余裕がないため、子育て・介護・病気治療と仕事の両立支援を進めることは、経済的に難しいと考えるかもしれません。ですが、仕事との両立支援制度の充実は、中長期的に見ると、企業にさまざまなメリットをもたらします。
続いては、子育て・介護・病気治療と仕事の両立支援を行うメリットをご紹介しましょう。
人材確保・定着に効果がある
働きやすい環境を作ることで従業員の離職が減り、貴重な人材を失うことを避けられます。また、離職率が下がることで求職者に選ばれやすくなり、優秀な人材の確保にもつながります。
従業員の働く意欲が増す
実際に、両立支援制度を利用する従業員はもちろんですが、現在利用していない従業員にとっても、両立支援制度があることで安心して働くことができます。これにより、従業員のモチベーションや意欲向上につながります。
業績の向上が期待できる
両立支援制度により、従業員の時間あたりの生産性や組織全体の業務効率の向上が促され、業績の向上につながることが期待できます。
従業員とのトラブルを避けられる
両立支援を制度化することで、従業員がどのような支援が受けられるのかを理解できます。制度化しない場合、上司によって対応が異なるケースも発生し、従業員間に不公平感を生みがちです。
両立支援を制度化すれば、従業員間のトラブルや労使トラブルを避けることにもつながります。
出典:「中小企業における次世代育成支援・両立支援の先進事例集」(中小企業庁)
子育て・介護・病気治療と仕事の両立支援の進め方
中小企業は規模が小さい分、従業員のニーズに即した制度を作りやすいという強みがあり、トップがやる気になれば両立支援制度を整えるのは難しくありません。
制度導入の具体的な方法は、厚生労働省から「中小企業のための『育休復帰支援プラン』策定マニュアル」や「企業における仕事と介護の両立支援実践マニュアル」「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」などが出されているので、参考にするのがおすすめです。
子育て・介護・病気治療と仕事の両立支援制度を整備するにあたっては、従業員への聞き取りやアンケートを通じて、現状を把握することが出発点になります。制度を整えたら就業規則に書き込んで明文化し、従業員への周知徹底、相談窓口の明確化を行うこともポイントです。
子育て・介護・病気治療と仕事の両立支援制度についての具体的な内容は、下記の記事で詳しく紹介していますので、併せてご覧ください。
両立支援制度の整備は企業の成長につながる
中小企業に限らず、企業が成長を続けていくためには、従業員が安心して働ける環境の整備が不可欠です。子育て・介護・病気治療と仕事の両立支援の充実は、中小企業にとって負担になるように思えますが、人材の定着・確保、従業員の働く意欲の向上、業績の向上、トラブルの回避など、中長期的に見れば、さまざまなメリットがあります。
ぜひ、両立支援制度の充実に力を入れ、従業員のニーズに応えた支援環境を整えてみてください。
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