1 はじめに

少子高齢化と人口減少の進む日本社会において、人手不足をはじめとした事業課題を抱える中小企業は少なくありません。早急に課題を解決し、生産性の向上や人材確保など、事業の持続的発展につながる糸口をつかみたいところです。
中小企業の経営力強化には、2016年に施行された「中小企業等経営強化法(以下、強化法)」に基づく支援策があります。ここでは、支援策の内容や、それに基づいた「経営力向上計画」の認定事例と併せてご紹介します。

2 強化法とは

強化法は、中小企業や小規模事業者が設備・人手不足などによる供給制約を克服し、将来的な事業の成長や、経営力および生産性の向上を図るために2016年に施行されました。
同法に基づく支援を受けるにあたって、中小企業や小規模事業者は、設備投資や人材育成・コスト管理のマネジメント向上といった、経営力を高めるための取組みが書かれた「経営力向上計画」を作成します。認定を受けることができれば、固定資産税の軽減措置や各種金融支援を受けられます。

3 強化法で支援を受けるための経営力向上計画参考事例

中小企業庁は、強化法に基づいて経営力向上計画の認定を受けた企業の、参考事例集を公開しています。
ある企業の経営力向上計画は、自動車部品・付属品製造企業の事例で、次の2点を考慮して作成されました。

  • タブレット端末やITシステムを導入し、業務効率化を図る
  • 製造工程に産業ロボットを導入し、業務効率化と生産性向上を図る

具体的には、タブレット端末とアプリ、ITシステムを導入することで、「生産現場における報告作業の効率化を図りながら、同時に不良品の原因などの情報を社内で共有できるようにする」というものです。ITシステムに関しては、納入元の大手システムベンダーのサポートを受けながら、効果的な導入と運用を目指すとされていました。
また、固定資産税の軽減措置を活用して新たな産業ロボットを導入し、人手がかかる製造工程の生産性向上を目指すという内容になっています。

※出典:経済産業省中小企業庁「中小企業等経営強化法 認定計画事例集」
 

続いて、経営力向上計画の認定を受けた企業の計画内容と、その計画がどのように実施されたのかについて見ていきましょう。

●事例1 ナイロン糸の輸入・販売および自社オリジナル製品の販売業を行う企業

この企業は、多くの靴下メーカーが「高品質・多品種・小ロット」の傾向へと変化しているため、種類別の数量管理や需要の動向分析、適切な在庫管理が課題となっていました。そこで、次の2点を解決策として、経営力向上計画書を提出しています。

  • 商品・販売・財務の一括管理が可能となるシステムを構築・運用する
  • 入出庫を標準化して作業を効率化し、適正在庫管理を実現させる

認定を受けた後は、固定資産税特例と中小企業経営強化税制を活用して電子計算機システムを導入し、作業の効率化を実現させたといいます。その結果、過剰在庫をなくし、欠品リスクのない数量管理ができるようになったとのこと。また、システム管理を実現させたことでメールによる受発注が可能となり、アナログ的なミスも減ったといいます。

今後は、シーズン別の商品需要の変動といったデータ分析を行うことで、より質の高い顧客サービスの提供を目指していくとのことです。

●事例2 プラスチックのコンテナ・買い物カゴの洗浄事業などを行う企業

この企業は、洗浄設備の老朽化によって、設備維持や人員確保のための費用が発生し、利益率の低下が課題となっていたとのことです。また、洗浄分野における価格相場についても判断に悩む部分があったといいます。経営力向上計画では、次の2点をメインの解決策としています。

  • 設備を導入して、新たに金属類洗浄の受注を確保する
  • 原価管理を徹底させ、人材育成にも取り組むことで業務効率化を目指す

認定を受けた後は、固定資産税特例と中小企業経営強化税制を活用して、新たに超音波洗浄機を導入しました。その結果、新しい市場開拓に成功し、受注が3.5%増加したといいます。また、原価計算ソフトを導入したことで、情報を社内で共有できるようになり、市場価格に基づいた原価管理が可能になったとのことです。
 ※出典:経済産業省中小企業庁「中小企業等経営強化法 経営力向上計画実践事例集」

4 おわりに

強化法による支援策についてご紹介してきました。
計画作成にあたっては、認定経営革新等支援機関でサポートを受けることも可能です。
企業が課題解決や経営強化を目指すにあたって、経営力向上計画を作成することによって、現在の経営環境の分析や、経営力向上のための次につながる課題を発見する機会になるのではないでしょうか。

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