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社会経済の不安定要因が継続する昨今、企業は激しく変化する外部環境に対応することが求められています。厳しい時代に企業が存続・発展し続けるには、経営層が迅速かつ正確に意思決定し、行動に移すことが必要不可欠ともいえます。
「経営者から学ぶ」対談シリーズは、青山学院大学陸上競技部の原晋監督が、様々なフィールドで活躍する経営者との対談を通じて、日本を革新していく中小企業経営のヒントを探っていく企画です。
前編では、日本テクノロジーソリューション株式会社 代表取締役社長 岡田 耕治氏に、下請けからメーカーへの転換を図った背景や事業領域の拡張についてお話を伺いました。
兵庫県神戸市にある同社は、パッケージ事業を主力事業とするほか、メディア事業やアライアンス事業など「魅せること」を強みとする複数の事業を展開しています。
この先も挑戦し続け、既存事業と関連する新たな事業をつくっていきたい、事業領域を広げていきたいと考える同社は、社員一人ひとりが輝き、挑戦できる舞台をつくることを大事にしています。
今回の後編では日本テクノロジーソリューションの組織づくりや人材育成についてお話を伺いました。組織づくり・チームマネジメントのスペシャリストでもある原監督の見解にもご注目ください。
対談ゲスト プロフィール
日本テクノロジーソリューション株式会社 代表取締役社長 岡田 耕治(おかだ・こうじ)氏
1968年、兵庫県高砂市生まれ。甲南大学卒業後、株式会社ビジネスコンサルタントに入社。1999年、日本テクノロジーソリューションに入社し、同年、2代目として代表取締役社長に就任。
人材は資産。各自が“らしさ”を生かし、強いチームをつくる
青山学院大学陸上競技部長距離ブロック 監督 原 晋氏(以下、原氏)
日本テクノロジーソリューション株式会社 代表取締役社長 岡田 耕治氏(以下、岡田氏)
原氏: 組織づくりの話でいうと、「ZOOプロジェクト」という独自の人材育成制度についてお聞きしてみたかったんです。なぜZOOなのですか。
岡田氏: 社員向けの説明をさせていただきますね。うちの会社はサバンナではなく、多様な個性を持ったいろいろな動物たちが共存できる動物園(ZOO)である。「動物」としているのは、他者と比較して苦しむ人間とは違い、誰とも比較せずに自らの個性を発揮して生きる動物のいいところを取り入れてほしいから。そして、お客さまが何回も来てくれる、言い換えるとリピートしてくれるような会社にしていきたい。そんな意味でZOOとしています。
原氏: 動物園がサバンナと違うのは、守られて生きていけることですよね。安心・安全な環境の中で、いかに自分を出して輝いていくか、挑戦するかという話なのかなと思いました。
岡田氏: おっしゃる通りです。サバンナとは違い、ある程度守られているのもそうですが、動物園には檻がある。この檻が企業でいう経営理念だと思います。この経営理念の中で、それぞれの動物に個性があるように、社員一人ひとりが輝き、挑戦していける会社であればいいなと考えています。例えば、「挑道(いどみち)」という新規事業提案の場を用意しています。月に一度の全体ミーティングで、新たなビジネスに挑戦したい人は挙手して、社内プレゼンを行うことができる機会です。とはいえ、あくまでビジネスですから、やる気があるからといって、提案を全て認めるわけではありません。一方で、何らかのプロジェクトを任せることもありますが、最後まで責任を持ってやり切れるかどうかを見てジャッジしています。
原氏: 陸上の世界も同じです。例えば、学生から「海外の試合や合宿に参加したい」と言われたとします。私は「君のためにお金と時間を準備できる。でも、一定の成果を収められないなら、それらを与えることはできない。君はどうやって成果を出すのか」というところまで踏み込んで話します。そういったリソースは私の監督就任当時はなく、歴代の選手たちが実績を積み上げてきたおかげで、多くの方が支援をしてくださるようになり、体制が整ったわけですからね。学生には言いませんけど、私はリーダーとして拒否権を持っています。これは認める、これは認められないと線引きする役目もあるのです。ZOOプロジェクトに話を戻すと、具体的にどんなことをしているのですか。
岡田氏: まずは、新卒1年目向けには2020年から、週に一度「◯◯の会」と題したトップとの勉強会を用意しています。そこでは事業に関する話というより、会社としての価値観や考え方に重きを置いた話をしています。若手に限らず全社員を対象としたものでは、半期に一度、全員が目標設定に関する事項をZOOシートに記入して役員がアドバイスする役員面談(はげみ)があります。
原氏: コーポレートサイトに「人はコスト(費用)ではなくキャピタル(資産)」と書かれているように、社員を大事にして、一人ひとりを伸ばしていこうとしていることが伝わります。
岡田氏: 社員のモチベーションが自然と上がる環境を用意したいのです。一方で、課題もあります。リーダー層の組織での役割意識が強くなり、個人の“らしさ”が失われているのを感じています。個人で背負おうとするのではなく、全体として強いチームをつくっていくのが理想です。強いチームのつくり方について、原監督の実体験をもとに教えていただけませんか。
原氏: 昔は個を伸ばして、みんなで上がっていくことで、チーム全体が底上げされるというやり方をとっていました。でも、時代の変化もあるのか、最近は全体を底上げして、同時に個も伸ばしていくやり方でないと、チーム全体が強くなれないと感じています。
岡田氏: そうなると、採用基準も変わってきていますか。
原氏: 昔はベースが根の良い選手を採用していましたが、今はちょっと変わっているけれど、能力が突出した選手を採用するようになっていますね。もちろん根が良いという要素は欠かせませんが、尖った個性を持った優秀な選手をあえて入れています。そのほうが面白い組織になります。
岡田氏: 会社もそうですね。今は社員数約40人ですが、2026年には100人の会社にしていきたいと考えています。そうなると採用の強化は必要不可欠ですし、これまでしてこなかった中途採用に挑戦する時期だなとも考えています。
原氏: 選手ではなくコーチに関する話ですが、この4月に元中央大学陸上競技部監督をヘッドコーチとして採用しました。ライバル校の監督経験者を抜擢したことは驚かれましたが、より高みを目指すには多様なタイプの人材でチームを構成することが必要だと考えたのです。組織にまとまりや盤石性があれば、異質な人材を採用してもそう簡単に崩壊しません。そういう意味で、中途採用は是非ともされたほうがいいと思います。
岡田氏: そうですよね。とても勉強になりました。原監督、今日は遠方までお越しいただき、素晴らしいお話をありがとうございました。
原氏: こちらこそ、いい時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。
最後に
■岡田社長から中小企業経営者へのメッセージ
社会状況や置かれた環境が刻々と変わっていく中で、自分たちの組織も変わろうとして、新しいことへ向けて、一歩踏み出す勇気を持つのは素晴らしいことです。ただ、新たな挑戦をするからといって、会社が積み上げてきたすべてのことを変えてしまうのは違うと思います。組織として変えていくところ、変えてはいけないところは明確に分けておく必要があるでしょう。それさえできていれば、既存事業とは違う事業へのチャレンジも、大きな可能性を秘めているはずです。
■対談を終えて原監督が感じたこと
2000年代初頭に大きな危機に陥りながらも、新事業を立ち上げて下請けからメーカーへと華麗な転身を遂げた強い組織の秘訣は、変化と挑戦を楽しむ姿勢にあると思います。そのスタンスが全社的に浸透しているので、岡田社長が目指しているとおっしゃっていた『スイミー』(好学社)に出てくる「大きな魚より、小さな魚の集合体のような組織になっていて、皆が同じ方向を向いてワクワク感を持って、新領域へ踏み出しているのだろうと想像しました。2026年には創業50周年を迎えますが、その頃はどんな新事業を始めているのでしょうか。気になる会社のひとつになりました。
MKT-2023-523
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