停電が起きる原因とは
停電は、以下のような原因で発生します。
・台風、竜巻:暴風による電柱や電線の破損
・大雨、洪水:土砂災害や浸水による電柱や電線の破損
・地震:揺れによる電柱や電線の破損
・大雪:電線に雪が積もることで電線が破損
・落雷:落雷による変圧器の故障
・鳥の営巣:鳥が電柱に巣を作るために運んだ針金が電線に接触して漏電
・車両事故:自動車などの車両が電柱にぶつかって電気設備が故障
・計画停電:電力需要が供給を上回る場合に大規模な停電を回避する目的で実施
・サイバー攻撃、テロ:電力システムの故障による停電
自然災害や鳥の営巣のように自然原因で発生する停電もあれば、車両事故やサイバー攻撃など人の行動が原因で発生する停電もあります。計画停電を除けば、停電がいつどこで発生するかを予想することは困難です。停電は時間や季節に関係なく、いつでも発生する可能性があります。
企業における停電のリスクとは
停電が発生すると、企業は以下のような損失や被害を受ける可能性があります。
・事業における収益機会の損失
・通信障害による連絡停滞
・データの損失
・セキュリティリスク
・従業員への影響など
事業における収益機会の損失
停電が発生すると、本来事業で得るはずだった収益を得られなくなるというリスクが生まれます。事業をおこなう上で使用する電子機器・機械などの多くは、電気がなければ機能しないためです。
中には、停電によって業務が一切できなくなる事業者もあるでしょう。たとえば、製造業で使用する機械が止まってしまった場合、その間の製造ができないため、収入は途絶えてしまいます。このように、事業が停止して収益獲得の機会が損失することは停電の大きなリスクです。
通信障害による連絡停滞
停電が発生すると通信障害が起こる場合があります。業務で使っているパソコンや通信機器などが停電で使えなくなるためです。
また、大規模停電が発生すると、連絡を取ろうとする人が急増し、電話や通信量が増加してスマホがつながりにくくなる場合もあります。
通信障害で外部との連絡が途絶えると情報収集ができません。情報が得られず停電の原因がわからないままだと、対応が遅れてしまう可能性もあります。
データの損失
停電でパソコンの電源が強制シャットダウンすると、データが損失するリスクがあります。特にデータの入力中や起動中などに停電が発生した場合、作業中のデータが消え、最悪の場合はシステムが破損する場合もあるので注意が必要です。
セキリュティリスク
停電が発生するとセキリュティ対策に影響が出るケースもあります。たとえば、防犯カメラや入退室システムの停止などです。そうした状況ではセキリュティが低下するため、窃盗などの犯罪リスクが高まります。
なお、オフィスセキュリティの電源は基本的に電池式です。そのため、停電が発生してもしばらくの間は稼働します。ただし、災害やテロなどが起こり地域規模の停電が発生した場合には、オフィスセキュリティ会社のスタッフは対応に追われるため、現地への出張がすぐにできず対応が遅れる可能性もあります。
設備が稼働できないことによる従業員への影響
停電が発生して設備が稼働できない場合、従業員への影響として以下のようなものがあります。
・冷暖房器具が使えず、季節によっては熱中症など健康被害のリスクが高まる
・水が使えなくなると、トイレを利用できなくなる
停電の発生原因が自然災害の場合、屋外に出られなくなり、従業員がオフィスに残り続けるケースもあります。冷暖房が使えない環境で過ごすことになると、夏場は熱中症、冬場は低体温症など、健康を害する可能性も出てきます。
また、ビルの場合は、停電によって水を供給するポンプが停止して断水になるケースもあります。
停電発生時に会社内で最初に起こるトラブルと初期対応
停電が発生した場合、会社では以下のような影響が想定されます。
・エレベーターが使えなくなる
・オフィスの電気が消える
・入り口のルームキーが使えなくなる
エレベーターには非常用電源が備えられているため、利用中に停電が発生してもエレベーター内が真っ暗になることはありません。インターホンやスマホなどを使って外部と連絡を取り、救助を待ちます。
ルームキーについては非常時に備え、シリンダーにカギを差し込んで開ける方法に対応しているタイプも多くあります。非常用の解錠方法を社員と共有しておきましょう。オフィスの電気が消えることに対しては懐中電灯やランタンで備えます。
また、電源プラグを差したままでいると、停電が復旧して電源が入った際に、過大な電圧がかかりパソコンが故障するケースがあります。ヒーターのように発熱性がある電気製品は、電気の復旧で電源が入ると火事につながる可能性があります。
そのため、停電が発生したら社内にある電気製品の電源プラグを抜き、身の安全を確保した上でブレーカーを落とします。復旧のタイミングがわからない場合は、社内にある電気製品の電源プラグを抜いておきましょう。
普段から備えておきたい、企業における6つの停電対策
前述のとおり、停電は季節に関係なく、また昼夜問わず発生する可能性があるため、企業では日ごろから対策を心掛けなければなりません。ここでは6つの停電対策を解説します。
1.緊急時の業務継続方法のマニュアルを策定しておく
停電の発生により事業の継続が困難になる場合を想定して、業務継続方法のマニュアルを策定しておきましょう。
業務継続方法として以下のような策定がポイントになります。
・在宅への切り替え
・停電時でも電気が使える蓄電器などの設置
・ほかの事業所や工場での業務に切り替えなど
停電で電気が使えなくなっても、上記のような対策をしておくことで業務の継続ができます。もしもの場合に備えて、業務継続方法のマニュアルを策定しておきましょう。
2.データのバックアップを定期的におこなうルールを決めておく
停電でデータが損失しないためにも、データのバックアップは定期的におこなうことが大切です。莫大なデータを失うのは企業にとって大きな損失になります。日ごろからルールを決めてバックアップをおこない、もしもの場合にデータが損失しないようにしましょう。
データのバックアップをおこなう媒体として、以下のようなものがあります。
・外付けハードディスク
・LAN内にあるファイルサーバー
・クラウド
この中でも、特に災害に強いのはクラウドサービスです。インターネット上にデータの保存ができるため、災害が発生した際でも物理的にデータやシステムが破損する心配はありません。
ただし、データ漏洩などセキリュティ面でのリスクがあるため、企業向けの信頼できるクラウドサービスを利用しましょう。
また、停電が発生した際に電源が切れてデータを損失しないためには、UPS(無停電電源装置)の導入もおすすめします。UPS(無停電電源装置)はパソコンに電気を供給できるバッテリーで、装着していると停電時でもパソコンの電源は切れず、作業途中のデータが消えることやシステムが故障する心配もありません。
3.従業員用の懐中電灯を用意しておく
停電に備えて従業員用の懐中電灯を用意しておきましょう。特に暗い時間帯に停電が発生すると、避難経路がわからなくなり、避難できない状況になるケースもあります。安全を確保するためにも、従業員一人に一つは懐中電灯が必要です。
停電対策用の懐中電灯は以下のようなタイプがおすすめです。
・電池式orソーラー充電に対応
・広範囲を明るく照らせる
・LEDタイプ
そのほか、キャンプ用のランタンもあると便利です。ランタンは円心状に広範囲に明かりを照らせます。特に明るいキャンプ用のランタンなら、ランタン一つで多くの従業員に明かりの供給ができます。
4.代替えとなる電力源を確保しておく
停電に備えるためには、代替えとなる電力源を確保しておきましょう。電力源があれば、事業の継続、通信手段や明かりの確保などもできます。
以下の表に、代替えとなる電力源とおすすめのポイントなどをまとめています。
名称 |
概要 |
効果 |
無停電電源装置 |
電力が絶たれた際に、パソコンに電力を供給する装置 |
パソコンの強制シャットダウンを防ぎデータを守る |
モバイルバッテリー |
携帯型充電器 |
スマホ、ノートパソコンの充電に使える |
ポータブル電源 |
ACコンセントが使える大容量のバッテリーを搭載している機器 |
パソコン、扇風機、テレビなどの電化製品が使える |
発電機 |
カセットガス、ガソリンなどを動力として電気を生み出す |
パソコン、扇風機、テレビなどの電化製品が使える |
産業用蓄電器 |
充電できる大容量の電池 |
種類によってはあらゆる機械、機器の電源として使える |
自家消費型太陽光発電 |
太陽光で作った電気を工場や事務所などで使用するシステム |
あらゆる機械、機器の電源として使える。蓄電池と合わせることで夜間の電気供給も可能。 |
事業の継続に備えるなら、蓄電器や自家消費型太陽光発電など大規模な電力源が必要です。扇風機やテレビなどの家電を使用するなら、発電機やポータブル電源などをおすすめします。スマホのバッテリー切れ対策として、モバイルバッテリーを備えておきましょう。
また、デスクトップパソコンのようにバッテリーが搭載されていないパソコンについては、突然の停電でパソコンが強制終了するのを防ぐために無停電電源装置が必要です。
5.停電時の避難方法とルールを共有しておく
停電時の避難方法やルールは、日ごろから従業員と共有しておきましょう。避難方法のルールを決める際には、以下を参考にしてください。
・従業員の身の安全の確保を最優先にする
・身の安全を確保したあとに避難・集まる場所を決めておく
・情報収集の方法を決めておく
・避難経路や避難路などを確認しておく
・負傷者の救出、応急手当などの救護担当者を決めておく
・ブレーカーを落とす、電源プラグを抜く、火の元を確認するなどの担当者を決めておくなど
防災担当者、救護担当者などをあらかじめ決めておくと、災害発生時の行動がスムーズになります。決めたルールどおりの行動ができるかどうかは避難訓練時に確認しておきましょう。
6.停電に強い環境に切り替える
停電に強い環境に切り替えることも対策の一つです。
たとえば、社用車がある場合は大型バッテリーを搭載している電気自動車に切り替えることで、停電発生時の緊急電源として使えます。
また、ビルによっては自家発電設備を設置しているところもあります。自家発電設備があるビルなら停電が発生しても、照明や電子機器、サーバーなどが使えるため、データの損失防止や停電に関する情報収集が可能です。そうしたビルにオフィスを移転するのも停電対策になるでしょう。
まとめ
停電による被害は、代替えの電力源を確保しておくことで軽減できます。データ損失を防ぐためには無停電電源装置を用意し、停電時に事業を継続させるためには蓄電器や自家消費型太陽光発電システムの導入もおすすめです。
また、停電は大規模災害が原因になって起こるケースもあります。停電時に災害が発生している場合も想定し、従業員を守るために避難方法や情報収集方法などのルールを決めておきましょう。
執筆者プロフィール:
田頭 孝志
気象予報士・防災士
田頭気象予報士事務所の代表。アウトドア系の雑誌に気象コラムの執筆をはじめ、大手メディアでハザードマップの見方や異常気象に関する防災記事などを多数執筆。子どもから大人まで分かりやすい内容と好評。BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数 ・防災マニュアルの作成に参画。
MKT-2024-508