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お客さまと保険会社とをつなぐ、大切な役割を果たしている保険代理店。そのなかでも保険代理業を専業とし、保険商品のみならず、お客さまが直面し得るさまざまなリスクのことも熟知し、ビジネスパートナーとしてサポートするのが、「プロ代理店」と呼ばれる方たちです。
本連載では、プロ代理店がお客さまの課題をどのように解決しているのか、その実例とともに紹介します。
第五回となる今回は、大阪府大東市にある株式会社Axis(以下、Axis)代表取締役 大手茂さん。2014年創業(2015年に法人化)のAxisは特に建設業界に強みを持ち、事故対応に力を入れてきました。さらに近年は健康経営も注力分野のひとつになっています。仕事に対する指針に加え、お客さまのリスク事例や今後の展望についても伺いました。
「お客さまが本当に必要とすること」を提案
――大手さんは運輸業や販売業など、保険代理業とは異なる業界を経験されてきました。はじめに、保険代理業へ転職した経緯を教えてください。
幼少期に貧しい家庭環境で育ったこともあり、自分の家族には辛い思いをさせたくないと感じていました。いろいろな仕事をしてきましたが、家族をもっと幸せにするために、自分で事業をやりたいと考えていたところ、AIU(*1)と出会ったのです。2009年にIS社員制度(*2)に応募して入社し、5年勤務しました。
*1 AIU保険会社。2018年に富士火災と統合し現在のAIG損害保険となる。
*2 AIU保険会社が1964年に業界の先陣を切って開発したプロ代理店(プロフェッショナル・エージェント)の養成制度(現在は、ICA社員制度)で、研修生は最長5年間のトレーニングと実務経験により必要な知識と営業力を身につけます。本制度開始以来、数千のプロ代理店を輩出しています。詳しくはこちらをご覧ください。
――その後、独立を果たし、法人化した際にはAxisという社名にしています。「A」はAIUのAかなと想像しましたが、社名の由来を伺いたいです。
「AIU×IS制度」と「Axis(軸)」を掛け合わせました。まず、AIUとのご縁があったからこそ、今こうして会社を経営できていることへの感謝があります。AIUに在籍していた時期は息子たちの教育費が一番かかるときでした。家計的には大変で妻には苦労をかけましたが、たくさんの学びや人とのつながりを得たかけがえのない時間でした。だからこそ、AIGという会社は私にとって特別な存在です。「軸」については長年野球をしていたこともあり、軸をぶらさないことが良い結果に結びつくことを身をもって知っています。保険代理店事業を生涯の仕事にするんだ、という願いも込めています。
――そんな強い気持ちを胸に保険業界に入ってから、もう14年経つんですね。
それなりに経験を積んできましたが、これからも気を緩めることなく「初心忘るべからず」を大事にしたいと思うようになりました。毎年している書き初めで、今年は「初心」と書いたんです。個人的な話ですが、2年前、バイクにはねられる交通事故に遭い、一時は命の危険もある状況でした。亡き母が「おまえには守らんとあかんお客さんがいる。まだこっちの世界に来るのは早いよ」と、守ってくれたのだと思っています。今でも通院を続けていて、身体は事故前の状態までには回復していませんが、当社のメンバーにサポートしてもらいながら仕事をしています。事故前とコンディションは違いますが、だからこそ初心を忘れず、目の前のお客さまと真剣に向き合っていきたいと考えています。
大手さんが年初に書いた今年大事にしたい言葉たち
――大変な経験をされましたね。現在はメンバーに息子さんが加わり、クラークさんと3人で仕事を進めるなかで、大手さん自身も現場に出て、お客さま対応をしています。お客さまとお話をするとき、どんなことを意識しているか伺いたいです。
当社を頼ってくださるお客さまに感謝し、お客さまの立場になって考えることを心がけています。「お客さまが自分の大切な身内、中でも特に近い存在のきょうだいだったら、自分はどう寄り添い、どう伝えるだろうか?」という視点を持つことが大事だと考えています。そして、会話のキャッチボールを通じて、「保険を契約いただく」のではなく、「お客さまが本当に必要とすることを提案する」よう意識しています。対応に満足いただいたお客さまから「ありがとう」と言っていただけるのが、この仕事の醍醐味でもありますからね。
顔を合わせることで、お客さまに安心していただきたい
――お話が深まっていくうちに、自然な流れでリスクコンサルティングに入っていくと思いますが、お客さまが気づいていない潜在的なリスクを引き出すために、どんなことを大事にしていますか。
フェイストゥフェイスでのやりとりをすることです。お客さまとは直接お会いしてお話を伺うことが大半です。コミュニケーションツールのひとつとして、お客さまとお酒を飲みに行ったり、釣りや小旅行などお客さまと共通の趣味を共に楽しんだりすることもあります。お客さまは中小企業の経営者が多く、そういったパーソナルな場だからこそ、会社を訪問したときにお聞きする事務的な話題とは違う、デリケートな話題を打ち明けてくださることがあります。従業員の前では言いづらい悩みやご自分の家族に関わるお話をお聞きすることは多いですね。
――ビジネスライクなやりとりにはない人間味や温かさを感じます。
ビジネス・商売だと割り切っていれば、緊急時を除く業務時間外や休日は、お客さまと関わらないのかもしれません。でも、私は昔の日本にあったような、古き良き“下町の近所付き合い”が理想なんです。お客さまから「犬を飼い始めたから見にきてよ。可愛いんだ」と言われたらお伺いしますし、土日祝にお客さまが主催するイベントに顔を出すこともあります。
お客さまの家族の一員になったワンちゃんを見たいし、普段とは違うお客さまの姿も見てみたいと純粋に思うんです。人に興味があるんでしょうね。それが結果的に、お客さまが「保険といえば大手さん、Axisさん」と想起して、何かあったときに連絡をくださることにつながっているんだと思います。
――そういった行動指針をもとに大手さんが日々向き合っている、お客さまの具体的なリスク事例について教えてください。
交通事故に遭い、後遺障害を負った経営者(A社長)の事例をお話しします。対向車がセンターラインを越えたために起きた事故で、A社長に過失はありませんでした。A社長は他社の自動車保険に入っていて、私は当社で加入いただいている傷害保険の手続きを対応しました。何度もお見舞いに出向いてお話をしたのですが、「こんなに親身になってくれる代理店は初めてだよ」と私の手を握って感謝の言葉を伝えていただきました。
お客さまが不安を感じているとき、私は電話ではなく対面して、お顔を見ながらお話をしたいと思っています。保険には当然「保険約款」というルールがありますから、保険金をお支払いできない場合や支払限度額を踏まえた上での補償内容、保険で100%解決できるとは限らないといった話も、直接お会いしてお伝えすることで、納得いただきやすくなると感じています。
そんな考え方なので、A社長のもとに何度も足を運んだのは、私にとって当たり前のことでした。顔の見えるやりとりに安心感をおぼえ、とても喜んでいただいたようで、A社長の経営者仲間を何人も紹介していただきました。
健康経営を目指す経営者のお役に立ちたい
――そういった事故対応のほか、近年特に注力しているのが健康経営のサポートではないかと、コーポレートサイトを見て思いました。御社も健康経営優良法人(*3)認定(「ブライト500」も含む)を受けています。具体的にどのようなご支援を行っているのでしょうか。
毎年4月に大東市民会館の会議室をお借りして、2時間の「健康経営セミナー」を開催しています。前半では人材・組織開発の専門家に、心理的安全性や従業員とのコミュニケーション、自律した組織などについて話してもらい、後半では私が「健康経営のすすめ」と題して、経営者が抱えやすい悩みや家族がここで働きたいと思える会社とはどんな会社か、社長と全社員で作り上げるチームワーク、健康経営優良法人認定という国からのお墨付きを得られることでどんな良いことがあるかといったトピックスでお話をします。
セミナー参加企業のうち、健康経営優良法人認定取得を目指す企業さまとは、1対1で向き合っていきます。初年度であれば月に一度訪問して、半年かけて認定取得に向けた課題設定や改善提案、進捗管理を行っていきます。例えば、認定要件として必須となる「健康経営の具体的な推進計画」や「健康づくり担当者の設置」、認定要件に含まれる「健康診断受診率実質100%」「保健指導の実施」など、定められたルールと照らし合わせながら、9〜10月の申請に向けて準備を進めていきます。
*3 地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」を顕彰する制度。優良な健康経営を行う法人を見える化し、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから評価を受けられる環境整備を目的として、2016年度に経済産業省が創設。
認定申請書類はお客さまとやりとりを重ね、私と事務担当(クラーク)とでダブルチェックしてから提出します。結果が出るのは翌年3月となります。2021年4月に第1回目のセミナーを開催し、今年で3年目となりますが、これまで約20社の健康経営優良法人認定取得をお手伝いしてきました。
――多くの実績を出していますね。健康経営に関してお客さまの具体的な事例を伺いたいです。
健康経営優良法人認定取得を目指すお客さま(B社長)に「ハイパーメディカル」(*4)をご提案したのですが、はじめのうちは加入に難色を示しておられました。B社長としては「従業員の日常生活での病気の備えをする必要はあるのか?」と疑問に感じていたようでした。
*4 「業務災害総合保険(ハイパー任意労災)」に「メディカル特約(疾病入院医療費用補償特約、疾病入院医療保険金支払特約)」を付帯したもの
ただ、ハイパーメディカルに加入いただくと、いくつかの認定要件を満たすことになります。私としては全従業員の万一のときに備えて加入いただくのが、B社長ひいては会社全体にとって良いと考えていました。B社長に私たちなりの考え、その背景にある想いを自分の言葉で伝えたた結果、「確かに必要だね」と加入してくださいました。ご契約後、私は、全従業員の前で、労災保険では日常生活で発病した病気は補償されないこと、B社長は従業員を大切に思っているからこそ加入してくださったことを伝えたのです。
その後、ある従業員(Cさん)が病気で入院・手術をして、ハイパーメディカルでお支払いする機会がありました。入院・手術で支払った費用が全額保険金として受け取れたことに、Cさんもご家族も「とても助かりました」と大変感謝されていたそうです。
CさんはB社長に「ここまで手厚い保険に会社として加入いただいてありがとうございます」と直接お礼を伝えてきたそうです。私が全社向けにした説明を思い出して、ハッとされたのだと思います。その後、B社長から電話がかかってきて「従業員からこんな言葉をかけられた。大手さんのおかげだ。ありがとう」と、私に感謝を伝えていただきました。感動の連鎖で私もボロボロと泣いてしまいました。
AIG損保から健康経営に関する情報をもらったのを機に始めた取り組みなので、新たな挑戦を始めるきっかけをくれたAIG損保にはとても感謝しています。
――御社やAIG損保の代理店が高い専門性をもってお客さまと向き合うプロフェッショナルであると、改めて感じるエピソードです。AIG損保のお話が出た流れで伺いたいのですが、AIG損保との関わり方を教えてください。
AIG損保には当社のような代理店の営業活動を支援する社員(ソリシター)がいます。私がお世話になっているソリシターは、毎月当社を訪問して、販売・経営に関わる助言や商品情報の提供や制度のレクチャーをしてくれます。何か質問事項や相談事項が出てきたときは、連絡するとすぐにレスポンスをくれるスピード感もありがたいです。代理店をきめ細やかにサポートしようとする姿勢に助けられています。
「保険=大事な人を守るもの」と子どもたちに知ってほしい
――ここからは今後の展望について伺いたいのですが、まずは大東市という地域に根差すプロ代理店としてどんな活動をしていきたいか教えてください。
子ども支援により力を入れていきたいです。2021年から「大東市家庭教育応援企業」に登録して活動をしています。企業や団体が大東市教育委員会と共に地域の子どもたちの成長を応援する取り組みで、当社では具体的に3つのことをしています。
1つ目は従業員の家庭教育の応援で、従業員が有給休暇を完全取得できる・子どもの行事時に休める体制づくりをしています。2つ目は地域の企業や店舗が講師となり、地域の方々に学んでいただく「大東まちゼミ」への参加です。過去に参加したときは、天災への備えや病気の治療費など、保険とも関わるお話をさせていただきました。
3つ目は職業体験学習の受け入れです。職場体験を希望する小中学生がいれば当社に来ていただき、保険代理店の仕事や保険の役割についてお話をします。特に私が伝えたいのは「保険も人を守る仕事のひとつである」ということです。一般的に、人を守る職業というと消防士や警察官などを思い浮かべる子は多いと思いますが、業界や勤務形態、働く現場は違えど、保険代理業も「保険という手段」を使って人を守ることができます。そんな素晴らしい仕事があると知ってほしいですし、体験に来てくれた子の中からひとりでも、この仕事に就く子が出てきたらいいなと想像しています。
――素敵な取り組みだと思います。最後に、プロ代理店としてどんな社会貢献をしていきたいか教えてください。
ずっと根底にあるのは、がんばる地元の中小企業経営者を応援したいという想いです。私は新規のお客さまを開拓するとき、基本的には地域の中小企業を訪問して、経営者と直接お話しすることを大事にしてきました。そのスタンスは今後も変わりません。中小企業の成長をお助けし、その過程で私たち自身も刺激をいただいて、より成長していけたらと思っています。
また、当社は現在3人体制ですが、営業とクラークを1人ずつ採用し、5人体制にする予定です。今年4月、AIG損保での研修を終えた息子が入社してくれたのはうれしい出来事でした。私が60歳になるまでの残り5年は共に突っ走り、より多くのお客さまのお役に立ちたいと考えていますが、体制を整えた後は息子や次世代のメンバーに引き継ぎができたらと考えています。
仕事で関わる人たち「みんな」を笑顔にしたいんです。「みんな」は、お客さまやお客さまの会社に勤める従業員だけでなく、当社の従業員、AIG損保を含みます。みんなに感謝し、全員が幸せになるような向き合い方をして、事業のお手伝いをしていきたいです。
大手茂
1968年生まれ
大阪府大東市出身。2014年に個人事業としてFBMトータルマネジメントを設立し、2015年に法人化に伴い株式会社Axisを設立し、代表取締役就任。
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