飲食店をオープンしたてのオーナーだと、基本的に経理も自ら行うことがほとんどでしょう。これまでに経理の経験があるのならまだしも、初めてという場合だと何かと不安も多いものです。そこで、経費の種類や収支シミュレーションの方法、すぐに試せるコスト削減のテクニックなどを紹介します。ぜひ今後の飲食店経営に役立ててください。
飲食店の経費にはどのようなものがある?
経費とは、運営にかかる費用のことです。経理を行う上で経費にできるものもあれば、できないものもあります。まずは、どのような経費があるかを知っておきましょう。
全体に大きく占める経費の項目は以下の3つとなります。
・食材・ドリンク原価
要するに、お店で扱っている材料費です。この材料費があまりにも高いと、たとえお客さまは満足しても経営が苦しくなってしまいます。逆に、低すぎると料理の品質を下げてしまうことになり、顧客満足度が低下しかねません。もし材料費があまりにも高すぎる場合は、在庫や仕入れが適正な割合ではないことも考えられます。いままでざっくりとしか把握していなかった場合は、エクセルなどを使用してきちんと再計算し、一覧にして項目ごとに可視化してみましょう。
・人件費
勘定科目としては、主にスタッフへ支払う給与手当や福利厚生費のことです。お店の規模や、性質に合わせてスタッフを採用したりシフトのスケジューリングをしたりしないと、無駄な経費がかかってしまうので注意が必要です。
・賃料(家賃)
店舗の賃料は、重要な経費の一つです。家賃の適正比率は売上の7~10%といわれています。あまりにも高いと経営を圧迫してしまいますので、こちらも十分に注意しましょう。
経費の計算でよく聞く「FLコスト」とは、人件費と食材・ドリンク原価を足した数字のことです。売上の55~65%程度が目安となりますが、業態によっても異なります。
その他、減価償却費や水道光熱費、クレジットカードの手数料なども、経費として計上します。修繕積立金や電話、ネットなどの通信費、店舗やユニフォームのクリーニング代なども経費になるので、覚えておきましょう。
ほかにも、人材採用にかかった広告費用や備品補充費、販売促進費、雑費なども経費です。想像以上にたくさんの経費が存在することに驚いたかもしれません。どこにどのぐらい経費をかけたらよいのか、最初のうちは面倒でも人まかせにせず、科目ごとに細かい内訳を出していきながら、経費全体を把握する必要があるでしょう。
収支シミュレーションの方法は?
「日別予測客数(席数×回転数)×客単価×営業日数」という公式で売上予測が可能です。例えば、営業日数が25日のレストランで、客単価は1,000円、店舗面積35坪、座席は50席、賃料300,000円、回転数が2.0だとしましょう。このケースで公式にあてはめて計算すると、2,500,000円という月間売上予測になります。
人件費は売上の25%程度を占めるといわれているので、このケースだと625,000円程度でしょうか。そして、食材・ドリンク原価率は売上の30%程度といわれるため750,000円。つまり、人件費と食材・ドリンク原価だけで1,375,000円となります。売上予測の2,500,000円からこの数字を引くと、1,125,000円となりますが、これが丸々営業利益、というわけではありません。ここからさらに店舗の賃料や水道光熱費、通信費、販売促進費といった経費も引かれることになります。
すぐに試せるコスト削減の方法
どんなに売上が多くても、経費がかかりすぎていると赤字になってしまうことがあります。経費は大きく賃料や人件費などの固定費と材料費や販促費などの変動費に分けられますが、これらをうまく削減できれば、トータルでコストを下げることができるでしょう。ここでは、具体的に実行できるコスト削減の方法をまとめて紹介します。
固定費の削減
コスト削減を考えるのなら、固定費を何とかしなくてはなりません。変動費よりも固定費のほうが高くなることがほとんどなので、まずはここを見直していきましょう。固定費を削減できれば、トータルでの営業利益もアップできるはずです。
固定費の中で、特に高くつくのは店舗の賃料(家賃)でしょう。ここを削減するには、物件のオーナーに交渉して賃料を下げてもらう方法が挙げられます。「賃料を下げてほしい」ということだけ伝えてもうまくいかないことが多いため、長期入居する希望など、家主へのメリットにつながることを合わせて伝えてみるのがおすすめです。不動産オーナーにとって一番避けたいのは、空室になって賃料が入らなくなってしまうことです。長期入居と引き換えに、賃料の値下げ交渉をするのは有効といえるでしょう。
また、銀行の振込み手数料も意外と無視できません。毎月たくさんの取引先に振込をしている、というケースだと、かなりの手数料額になることもあるでしょう。ネットバンキングサービスを提供している銀行なら手数料が安くなることがほとんどなので、比較・検討してみましょう。メガバンクや大手の都市銀行なら、たいていネットバンキングサービスを提供しています。また、最近少しずつ広まっている電子マネーの積極的な導入も、クレジットカードの手数料を削減できる一つの方法です。
そして、電気やガスなどの契約プランも見直してみましょう。多くの電力会社ではライフスタイルに合わせた料金プランを複数用意しています。ガス会社も同様に、いくつかのプランを設けていることが多いので、お店の規模や営業時間なども考慮し、検討してみましょう。
さらに、人件費はどうでしょうか。社員だけでなくアルバイトを雇うと、短時間雇用が原則となるため、もっとも忙しくなる時間帯だけシフトに入ってもらうことが可能です。年末年始やゴールデンウイークといった繁忙期だけ採用する、ということもできるため、相当なコストダウンを見込めます。その上で、現在のシフトを見直すことも大切です。それほど人員が必要のない時間帯に、たくさんのスタッフを配置していないでしょうか。逆に、忙しい時間帯に十分なスタッフを配置できていますか?
シフトのスケジュール調整は、経営側にとっては重要な経費節減の要素です。常に社員とアルバイトの役割に見合った適正な要員配置を心がけましょう。
飲食店の厨房では常に水を使うため、水道料金もかなりの経費となっています。自治体によって異なるものの、上下水道の減免制度があるので、利用できれば水道代の削減が実現できます。自治体によって条件もまちまちなので、気になる方は自治体に問い合わせてみましょう。個人だけではなく店舗にも適用できる減免制度があります。
また当たり前のことですが、水道光熱費に対して、スタッフにコスト意識を持たせましょう。普段からの心がけで、いくらでも節約することが可能です。
変動費の削減
飲食店の変動費を削減する方法の一つとして、メニューを見直すことが挙げられます。材料費や原価のコストダウンが可能なメニューを開発できれば、トータルでのコスト削減が実現できるでしょう。そのためには仕入れのコストを見直す必要もあるので、業者に値引き交渉したり、仕入れ業者を再検討したりといったことも時には必要です。
また、食材のロスを少しでも減らすことも重要なポイントです。廃棄する食材が多くなればなるほど損失になります。ロス率を下げるためには、無駄な在庫を抱えないことです。そのためには、徹底した在庫管理も必要となるでしょう。仕入れ日や仕入れ量、消費期限、残量をノートへ記し、先に仕入れたものから使用する先入先出法を徹底してください。
支払い方法を見直すことで、仕入れ価格を下げられる可能性もあります。支払手形や掛けで仕入れるのではなく、現金払いをするので単価を下げてほしい、と交渉してみましょう。業者からすると、手形や掛けは現金化できるまでに1~3ヶ月ほどかかることも多いため、できれば現金払いしてほしいと思っていることがほとんどです。交渉次第で、単価の引き下げは十分可能でしょう。
販促に使っているお金も見直しましょう。新聞折込チラシやポスティング、TVのCMなどいろいろな方法がありますが、マーケティングやプロモーションで大切なのは費用対効果です。その都度、効果を計測することが大切だといえます。飲食店のタイプによっては、折込チラシよりもポスティングのほうが効果の出やすいこともあります。また毎回測定と分析を行うことで、トータルでの販促費を軽減し、集客効果も高められる可能性があるでしょう。
まとめ
飲食店経営にかかる経費はたくさんあります。まずはどのような経費があるのか、どのぐらいを目安としたらよいのかを覚えましょう。その上で、営業利益をアップさせるために無駄な経費はどんどん削減していくべきです。変動費よりも固定費のほうが高くつくケースがほとんどなので、まずは家賃や人件費などの固定費から削減できるように努めてみましょう。さらに食材・ドリンク原価は飲食店の経費の多くを占めるため、ここを見直すことで営業利益をグッとアップさせることは十分に可能です。この記事を参考に、経費についてよりしっかりと考えてみてはいかがでしょうか。
*記載されている法令、規則等は記事作成日現在のものです。
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*お客さまの個別の案件につきましては、専門家・専門機関にご相談ください。
MKT-2019-500
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