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地震発生率が高い日本では、いつどこで被災するかわかりません。そのため、個人のみならず企業などでも、地震対策を行うべきです。特に、中小企業の場合、従業員の死傷や事務所・工場の損壊など、地震などで事業継続が難しくなるケースもあります。そのような状態にならないためにも、早くから地震対策に取り組むべきでしょう。
ここでは、中小企業が事業継続のために行うべき、被災後の事業継続に関する対策をご紹介します。
日本は本当に地震の発生率が高い国なのか?
日本は地震大国といわれていますが、実際にどれくらい地震が発生しているのか、きちんと理解している人は少ないでしょう。2000~2009年の10年間に世界中で起きたマグニチュード6.0以上の地震は1,036件で、そのうち、日本で212件起きています。つまり、マグニチュード6.0以上の地震の約20%が、日本で起きたことになるのです。
2011年に起きた東日本大震災のような大型の地震が、いつまた起きるかわかりませんし、「首都直下地震」や「南海トラフ地震」など、いつかは起きるであろうと推測されている大型地震もあるのです。
このような環境を考えると、地震対策をしないという選択肢は大きなリスクを背負うことになるのではないでしょうか。
出典:「平成22年版 防災白書」(内閣府)
地震が発生した場合に考えられる企業が受ける被害とは?
地震の被害は揺れによる被害だけではありません。地震が元で起きた津波や火災による被害もあります。
ここでは、「人的被害」「物的被害」「その他の被害」についてどのようなものがあるか、そしてこれらの被害が企業にどのような状況をもたらすのかを見ていきましょう。
・人的被害
地震が発生した場合の人的被害としては、従業員の被害があります。地震が発生すれば、オフィス内や工場内などで什器や工作機械などが転倒したり、窓ガラスなどが割れたりして、そのためにケガを負うことがあります。また、逃げるときに階段で転倒する可能性もあるでしょう。ケガの程度によっては、すぐに働けるかもしれませんが、長期治療が必要な大ケガをする可能性もありますし、最悪の場合死亡する可能性もあります。
特に、地震規模が大きい場合、火災や津波などの二次災害によって、従業員が死亡するケースもないとはいえません。このように、地震が発生して人的被害が起きれば、規模の小さい中小企業にとっては大打撃です。
・物的被害
地震が発生した場合の物的被害としては、会社の設備が壊れる可能性があります。業務に必要なパソコンやプリンターが故障したり、LANケーブルが断線してインターネット回線が通じなくなったりすれば、業務が成り立たない企業もあるでしょう。また、工場などの製造現場などを運営している場合、機械や器具などが故障してしまう可能性もあります。
さらに、製造業の場合、地震で荷崩れしたりして商品がダメージを受けたり、火災で商品が焼失したり、津波で商品が濡れてしまうこともあります。そして、最悪のケースでは、オフィスの入った建物や自社ビル、自社工場などが地震で倒壊したり、火災で焼失したり、津波で浸水する可能性もあるのです。
・その他の被害
その他の被害としては、地震で直接受ける被害と、地震が元になり事業を継続していく上での被害があります。例えば、地震で直接受ける被害としては、重要なデータの損失があります。パソコンやサーバーなどが壊れてしまえば、記録されている顧客情報をはじめとする、重要なデータを喪失する可能性があります。
事業を継続していく上での被害としては、地震により顧客が減ってしまう可能性もあります。これは、BtoBでもBtoCでも同じです。商品が無事、もしくはサービスを提供できる状況でも、顧客である個人や企業が地震で金銭的に被害を受けてしまえば、売上が大きく減少するかもしれません。反対に、仕入先が地震の被害に遭って、商品を入手できない状況になることがあるかもしれませんし、入手できても通常よりも高額で仕入れなければいけない可能性もあるのです。
また、見落とされがちですが、ケガや死亡に至らなくても、従業員が道路事情などで出勤できない状況になるケースもあります。
地震の被害が企業にもたらすもの
このように、地震が起きればさまざまな被害が企業を襲い、最悪の場合は事業再開が困難になる可能性もあるのです。顧客がいないから売る相手がいない、売りたくても仕入れ先がないから売れないという、業務上の取引相手の問題だけではありません。
人的被害で従業員がいない、工場が火災で消失してしまった、津波でオフィスが浸水して商品が売り物にならないなど、自社そのものが受けた被害で事業継続が困難なケースもあるでしょう。そして、結果的には売上がなくなることで、人件費や固定費が支払えませんから、会社そのものが倒産することもあります。
地震の被害に備えて中小企業が行うべき事業継続力強化計画の策定
倒産という最悪のケースに陥らないためにも、地震の被害に備えておくことが大切です。中小企業は、どのような備えを行っておくべきなのでしょうか。例えば、「人的被害」「物的被害」「その他の被害」という項目であれば、下記のような対策をとれるでしょう。
<人的被害>
・従業員や来訪者に対する避難誘導手順を作成し、訓練を行っておく
・気象情報や防災情報(避難勧告など)を入手する手段を用意する
・安全確保のため、「ヘルメット」「長靴」「手袋」「雨合羽」「担架」「ゴムボート」「拡声器」などを用意する
<物的被害>
・棚や什器、パソコン、モニターなどを固定する
・ガラスに飛散防止策を実施する
・本社ビルや工場などの耐震性能を調査し、問題があれば補強する
<その他の被害>
・停電に備え、発電機や蓄電器を用意する
・特定の業務を担当する従業員が出社できない場合に備え、担当業務をマニュアル化しておく
・業務継続に備え、仕入れ先の取引情報をまとめた資料を作成し、従業員同士で共有する
・資金繰りに困らないよう、休業補償を含めた被災時の保険に加入する
また、中小企業庁では国会の承認を得た「事業継続力強化計画」を2019年7月16日より施行し、中小企業の自然災害など対する備えを促進するため、「事業継続力強化計画」という認定制度を創設しました。
事業継続力強化計画の認定を受けるためには、下記の4つについてどのような対策をとるのかを決める必要があります。
・ハザードマップなどを活用した自然災害リスクの確認方法
・安否確認や避難の実施方法など、発災時の初動対応の手順
・人員確保、建物・設備の保護、資金繰り対策、情報保護に向けた具体的な事前対策
・訓練の実施や計画の見直しなど、事業継続力強化の実効性を確保するための取り組み
事業継続力強化計画は、万一の際に事業を継続するために必要な骨子の計画を策定するものなので、記載量は数ページ程度で収まります。しかしながら、この数ページの計画書の内容を考えることによって、災害が発生したときに何をすれば良いか整理できているので、人命の安全確保や事業の継続のための初動を迅速に起こすことができるようになります。
また、事業継続力強化計画は各地の経済産業局に提出することで、経済産業大臣の認定を受けることができます。この認定を自社のウェブサイトや名刺に掲載することで、取引先企業に安心と信頼をアピールすることもできます。
詳細な計画を立てる際には、中小企業庁が公開している「事業継続力強化計画作成指針」や「事業継続力強化計画策定の手引き」などをご覧ください。
出典:「事業継続力強化計画」(中小企業庁)
事業継続力強化計画認定を受けるメリット
事業継続力強化計画の認定を受けるメリットは、災害の事前準備ができることだけではありません。
例えば、「税制措置」として、認定計画で取得した設備について、取得価額の20%の特別償却を受けることができます。また、「金融支援」として、日本政策金融公庫の低利融資などを使って、資金調達を行うことが可能です。さらに、補助金などを申請する場合、審査時に加点されます。
ほかにも、事業継続力強化計画の認定を受けると、認定ロゴマークを利用できるようになります。この認定ロゴマークを利用することで、企業としての信頼度をアップさせることができるでしょう。
各種補償を受けられる保険に加入しておく
事業継続力強化計画をすぐに策定できない場合でも、事業継続力強化計画の記載内容や記入例に目を通しておくことは重要です。
これを行っておけば、「ハザードマップを見て自社の立地のリスクを知る」「自社の事業継続のために事前に協力関係を結んでおくべき企業を考える」「大事なデータのバックアップを取っておく」など、すぐにでもやっておくべき対策がわかります。まずは、できることから始めましょう。
また、事前に事業継続力強化計画の策定をしていても、資金がなければ計画を実現できません。建物、機械、什器、備品の修理や再取得のための資金だけではなく、被災後から事業再開するまでの運転資金や人件費・家賃等の固定費の支払いが必要になります。事業継続力強化計画は、計画と資金の両方が整ってこそ、初めて機能します。
そこで、計画を立てるために取引銀行に相談したり、被災後の資金準備のために地震保険に加入したりしておくことが必要なのです。
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