Global Risk Manager

2024年と2034年、今後10年間のトップビジネスリスクとは?

2025年4⽉4⽇ 公開

RIMS⽇本⽀部 × AIG損保

Global Risk Manager Vol.011 2024年と2034年、今後10年間のトップビジネスリスクとは?

本連載シリーズは、リスクマネジメントのグローバルな⾮営利組織、RIMSの⽇本⽀部とAIG損保の共同編集により、これから海外進出を⽬指す、またはすでに海外進出している企業のリスクマネージャーのスキルセット向上を⽬指しています。⽇々の業務はもとよりビジネスの先を⾒据えた洞察‧推察にお役⽴ていただければ幸いです。

次の10年間は、サイバーセキュリティやデジタル技術のリスク、労働市場の変化、地政学的緊張の⾼まりが企業の環境を形作っていくと予想されています。今回は、企業が現在直⾯しているトップリスクと10年先に⾒込まれるトップリスクに関する海外の調査結果とポイントをご紹介します。⾃社のリスクマネジメント戦略を検討する際にお役⽴てください。

Index

サイバーリスク、経済、⼈材は、現在も10年後も主要なテーマ

主要なトップリスクと、その向き合い⽅

今後10年間のリスクレベルは上昇していく

サイバーリスク、経済、⼈材は、現在も10年後も主要なテーマ

2024年と2034年のトップビジネスリスク

グローバルコンサルティングファームのプロティビティが実施した「トップリスクに関する経営陣の視点」(※)として、さまざまな業界の組織の取締役や経営幹部を対象に調査を⾏い、企業が現在直⾯しているトップリスクと10年先に⾒込まれるトップリスクを発表しました。

2024年のトップリスク

  1. インフレ圧⼒を含む経済状況
  2. 優秀な⼈材を惹きつけ、育成し、保持する能⼒。働き⽅改⾰、後継者問題への対応
  3. サイバー脅威
  4. 第三者リスク
  5. ⾼まる規制変更と精査

2034年のトップリスク

  1. サイバー脅威
  2. 優秀な⼈材を惹きつけ、育成し、保持する能⼒。働き⽅改⾰、後継者問題への対応
  3. 供給が不⾜する新しいスキルを必要とする、デジタル技術の採⽤
  4. 新技術や新興技術、その他の市場要因によって可能になる破壊的イノベーションのスピード
  5. ⾼まる規制変更と精査

2024年と2034年のトップリスクに基づくと、サイバーリスク、経済、⼈材は、すべてリーダーの関⼼を動かす主要なテーマとなっています。

 

主要なトップリスクと、その向き合い⽅

市場経済の不確実性

中央銀⾏の政策、政府による⼤規模な景気刺激策、⻄側諸国による中国に向けたデリスキング(※)、地域紛争など、地政学的状況の進展が、市場の不確実性を⾼める要因となります。

 

経済の不確実性が続くと、政府やさまざまな機関が規制措置を通じて市場機能に⼲渉する可能性も⾼まります。そのため、業界特有の規制が広範囲に変化する可能性や、変化した際の規模は不確実なものとなります。

 

リーダーは、信頼できる予測能⼒を構築して正確なシナリオを作成し、組織が将来のあらゆるビジネス状況に備え、レジリエンスを強化していくことが重要です。

 

  • デリスキング(De-risking):リスクを回避するために断交するのではなく、リスクの低減を図りながら、関係を維持していくこと。デカップリング(分断)に代わる地政学上の概念。

サイバー脅威の加速

今後10年間で、⼈⼯知能などの技術や量⼦コンピューティングの出現が予測され、組織がデータを保護する⽅法が変わり、セキュリティに関する重⼤な問題が⽣じる可能性もあります。多くの組織が、業務上の⽬標や市場進出の⽬標を達成するために、アウトソーシングや共同ソーシングへの依存度を⾼めています。

 

組織は、企業データと顧客データが安全であることを確認するために、これらの外部委託契約と第三者パートナーが、現⾏の法律と規制を遵守していることを確認する必要があります。

 

サイバーセキュリティにおいて、地政学的な緊張はより⼤きな役割を果たしており、この傾向は今後さらに⾼まっていくと予想できます。競合する国益、国家間の領⼟問題、グローバルなテロリズムは、特定の地域や国におけるサイバーリスク評価に影響を与えます。先⾏する組織は将来を⾒通す先⾏指標と統合的な分析を導⼊し、サイバー脅威の特定と防御に積極的に取り組んでいます。

⼈材に関するリスク

優秀な⼈材を惹きつけ、育成し、保持し、労働⼒の期待の変化に対処し、後継者の課題に対処する能⼒は、2024年と2034年の両⽅で第2位になっているように、ビジネスリーダーにとって⻑期的な課題となります。

 

新しい技術には、新しいスキルが求められます。従業員のスキル再構築およびスキルアップが必要となるなど、現在だけでなく将来も経営課題となるでしょう。スキルを⾝に付けた⼈の仕事が、⼈⼯知能(AI)に取って代わられる懸念はあるものの、新しい技術は仕事を合理化し、⼈々をより戦略的かつ有意義な活動に解放する機会を提供してくれます。⼈材関連のリスクに対処する上で、新しい技術が重要な役割を果たすことは明らかです。

今後10年間のリスクレベルは上昇していく

リーダーに求められるのは、急速な変化に対応できるスピード感

今後10年間でリスクレベルは上昇し、組織のリスクプロファイルは、急速に、時には予期せず発⽣するイベントやリスクに敏感であることが、今回の調査結果から推察できます。

 

現在も将来も、リーダーはビジネスを円滑に運営し続けるために、複数の外部リスクを効果的に管理することが期待されています。そのためには、経営陣や取締役会は、さまざまな戦略⾯や業務⾯での懸念に迅速に対応し、変化のスピードに追いつく必要があります。

詳しくはRIMS⽇本⽀部の
『Risk Management』【Web特別版】2024年7⽉号をご覧ください。

出典

本記事は、リスクマネジメントのグローバルな⾮営利組織、RIMSが発⾏する機関誌「Risk Management」【Web特別版】2024年7⽉号の記事を、RIMS⽇本⽀部とAIG損保が翻訳・共同編集したものです。

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