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グローバルビジネスで考える、「信用」とは?(益 尚⼦)

益 尚⼦|Naoko Masu
AIG損害保険株式会社
信⽤保険部⻑ 兼 取引信⽤保険チームリーダー

2002年9⽉に旧AIU保険会社に⼊社。前職である外資系メーカーでの与信管理を司る審査部の経験を活かし、⼀貫して⼤企業向けの取引信⽤保険およびポリティカルリスク保険の引受けおよび推進を担当。取引信⽤保険を⽇本で推進すべく、AIG本社とのコミュニケーションを深める。⽇本のマーケットでも取引信⽤保険を導⼊し、⽇本のお客さまからのご意⾒を反映しながら⽇本特有の商品も作り上げてきた。

取引信⽤保険という保険商品をご存知でしょうか?あまり聞きなれない保険商品かもしれませんが、端的に⾔うと、取引先が代⾦を⽀払えなくなってしまうリスクに備える保険商品です。

例えば、保険契約者である売主が、取引先(買主)との間で、取引先への納品から90⽇後に代⾦をお⽀払いいただく契約をしていたとして、納品後に取引先の資⾦繰りの問題や倒産などによりお⽀払いいただけなくなってしまった場合に、取引信⽤保険が貸倒れの損害を補償します。取引信⽤保険は、ヨーロッパでは⼀般的な保険商品ですが、⽇本でも20年ほど前から徐々に浸透してきたように思います。

特にグローバルビジネスを展開する企業は、取引信⽤保険を採⽤するケースが増えてきています。

今や多くの損害保険会社が扱っている取引信⽤保険ですが、AIG損保の保険商品の強みはグローバルネットワークです。AIGグループが世界の国と地域でグローバルに取引信⽤保険を展開しているので、AIG独⾃のデータベースを活⽤することができるのです。

AIG独⾃のデータベースには、世界中の企業情報が蓄積されていて、海外の企業であっても多くの場合、引受担当者が国と住所、社名を⼊⼒するだけで決算情報など与信判断の材料を⼊⼿することができます。

つまり、売買契約当事者外からの⽬線として損害保険会社がお客さまの取引先に対するリスク評価をすることにより、客観的な評価が可能となります。こうした背景から取引信⽤保険を提案させていただくことによりお客さまにとって気づきにもつながる場合もあります。しかしながら、こうした冷静でスマートな対応だけが私たちの強みではありません。

以前、とあるお客さまの社⻑から取引信⽤保険の⾒積りを依頼されたときのこと。お客さまの取引先⼀覧表を確認していたとき、信⽤度の⾼い上場企業の中に、1社だけ信⽤度も規模もかなり低い取引先がありました。残念ながら、この取引先は保険の対象と認めることができない旨を伝えました。

社⻑は、「君が⽣まれる前から家族ぐるみの付き合いで、60年以上も取引きしている。⼀度も⽀払いが遅れたことがないのに」と不愉快そうにしていました。しかしながら、ほどなくして社⻑から、その取引先が倒産したとの連絡が⼊りました。

そして社⻑は、「社外の視点の重要さを痛感した」と⾔って契約してくださいました。

ビジネスには、数字からは⾒えない経営者や担当者の想いがあると思います。「信⽤」と名のつく保険商品だからこそ、⼀つひとつ、⼀⼈ひとりのビジネスをしっかり⾒つめたいと思っています。

私たちは、取引信⽤保険をご契約いただく過程で、取引先の倒産リスクを決算内容等の客観的な情報をもって審査します。保険会社を第三者の視点として、お役⽴ていただけることがあります。

⼀⽅で、お客さまは取引先をその時の決算内容等の定量的な評価だけでなく、⻑年培ってきたビジネスパートナーとの信頼関係を含めて評価されていることがあります。保険は、あくまでもお客さまのビジネスをサポートするものですから、個々の事情もできる限り考慮したいと私は考えています。

取引信⽤保険の他にも、グローバル進出する企業の皆さまから⽀持されている保険商品があります。ポリティカルリスク保険です。この商品は、与信リスクに対応する点で取引信⽤保険と似ていますが、取引先のある国のカントリーリスクに特化しているものです。

例えば、取引先に決済する資⾦はあるものの、国の情勢が不安定になり、クロスボーダーの送⾦規制がかかり決済できなくなるリスクや、取引先が国営企業の場合に、国の規制により⽀払いができなくリスクを補償します。

こうしたリスクこそ、AIGグループのネットワークが発揮されます。AIGはヨーロッパ・⽶国でポリティカルリスクを⻑年引き受けているため、国別のリスクに対する知⾒を豊富にもっています。⽇本でお受けするお問い合わせもグローバルの引受部⾨と連携し、保険のお引受けを判断するための知⾒を共有してもらうことで、リスクを理解し、お客さまへのスピーディーなご提案につなげています。

益 尚⼦(ます なおこ)
AIG損害保険株式会社
信⽤保険部⻑ 兼 取引信⽤保険チームリーダー

2002年9⽉に旧AIU保険会社に⼊社。前職である外資系メーカーでの与信管理を司る審査部の経験を活かし、⼀貫して⼤企業向けの取引信⽤保険およびポリティカルリスク保険の引受けおよび推進を担当。取引信⽤保険を⽇本で推進すべく、AIG本社とのコミュニケーションを深める。⽇本のマーケットでも取引信⽤保険を導⼊し、⽇本のお客さまからのご意⾒を反映しながら⽇本特有の商品も作り上げてきた。

本記事の内容は、2024年2⽉時点の事実に基づき記述しています。記事内の数値や部署名または⼈材の所属は現在の内容と異なる場合がございます。

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