本場アメリカで磨き上げた事故対応力（松原左枝）

私は⽗の仕事の関係で、アメリカで過ごしていた時期がありました。ほとんど英語が話せない状態での突然の海外への転校は、次の教室がどこかも分からないほどで、とても⼼細い思いをしました。でも、なぜか、いつも誰かが必ず助けてくれていました。

私は、この体験を原点に、「困っている誰かを⽀えたい」と⾔う想いから⼤学卒業後は⽇系の損害保険会社へ⼊社。アメリカの駐在員として6年半、企業の製造物賠償リスクを補償するPL保険を中⼼に、様々な事故案件を多く担当させていただきました。

私が学⽣⽣活をアメリカで過ごし⼼細い思いをしていた時、⽗もまた⽇本を離れ異国で不安や⼼配を抱えながら働き努⼒していたと想像すると、なんだかあの頃の⽗を⽀えているような感覚にもなり、この仕事は私にとって天職だと思えるようになりました。

損害保険会社の事故担当者は、⼀つの事故に複数の損害保険会社が関わる現場を多数経験します。これは相⼿⽅として対峙することもあれば、共通の相⼿⽅に対し共に対峙する場合もあります。

それぞれの⽴場で他社が次にどのような戦略に出るのかというのは⼤抵の場合、ある程度読めるものなのですが、AIGだけはそれが読めない。想像を超える戦略に打って出るシーンを数多くみてきました。

⼀⾔で⾔えば、発想からまったく違うんです。PL保険はアメリカで発展した保険で、アメリカにおいては驚くほど⾼額な賠償評決が出ることもある厳しい戦場です。更に常に新しい法理や制度、判例が⽣み出されている“本場”でもあります。

私の眼にはAIGは“本場”でリーダー的な存在と映っていましたし、AIGでは常に新しいアイディアが⽣まれ、最新の法理や論理を取り⼊れた綿密な事案戦略を練り、時には新しい判例を導き出してしまう。

正直これは敵わないと思いました。

お客さまである⽇本企業が⽇々刻々と変わる環境のもと、競争に勝ち抜くためのグローバル戦略を⽴て実⾏・推進していく中で、保険会社側もそれに合わせて変わっていかなければいけないのではないか。

視野を広くグローバルな基準で考え、⽇本企業をサポートできる存在になりたい。そんな思いが⽇増しに強くなっていったんです。

そうして、私は、AIG損保に転職をしました。

AIG損保の⼈間として現場に出てすぐに、AIGがプロフェッショナルの先にあるリーダーであるという前職の時に感じていたことが直ぐに実感できました。

例えば、私が担当するお客さまがシンガポールで訴えられたとします。私はシンガポールでの事故対応の経験はありませんが、現地で事故対応をしているスタッフがいるので、彼らに聞けばその国の⺠事訴訟制度やその都市特有の事情や慣習がすぐにわかり、お客さまに個別具体的な提案が可能となります。

そこに加えて、現地の事故対応の経験や知⾒も蓄積されていますし、弁護⼠など外部の専⾨家との関係も深く、訴訟戦略もすごく厚みがある。

広域なグローバルビジネスを⽀えるための様々な専⾨性が世界中でスクラムを組み組織化されて磨き続けられている。数年では構築できないような環境がそこにありました。

AIGが組織的な対応を可能にしているのは、お客さまに多国籍企業が多く、世界中で様々な事故対応を経験するなかで、その恐ろしさと必要性を熟知しているからだと思います。

海外では、⽇本では考えられない⾼額な損害賠償請求などもあるため、危機意識がまったく違うと感じました。

⻑くアメリカで経験を積む中で⽇本企業の皆さまに感じることは、⼀般的に⽇本⼈は控えめであまり⾃⼰主張をしないということです。海外の事故の対応でも⽇本企業は主張に遠慮があったり、⾔いたいことを⼗分に⾔えていなかったりすることがあります。でも、決して主張がないわけではないんです。だから、私がそういう部分をサポートしたいんです。

⽇本企業ですから海外で“⽇本流”にビジネスをすることは問題ありません。むしろ、⽇本ならではの強みや美しさを世界で躍動させてほしいです。

しかし、そこで何か事故が起きた時、もはや“⽇本流”の対応では通⽤しなくなってきています。そこは敢えてお客さまにも強く⾔わせていただいています。⼀⽅でお客さまの「思い」もしっかりと海外に伝えたいとも思っています。