皆さま、いかがおすごしですか?この「異国の風に誘われて~世界・家族放浪記~」は、旅にまつわるさまざまな仕事を手がける夫婦ユニット「旅音(たびおと)」が日本から遠く離れた異国での、旅の思い出をつづる連載です。
今回お届けする旅の舞台は南米、パタゴニア。パタゴニアは、アルゼンチンとチリにまたがる南緯40度以南の地域のことです。北部には大平原、南部には雪に覆われたアンデス山脈や氷河といった、パタゴニアを象徴する風景が広がります。
「スケールの大きな自然と出会いたい」という思いが叶った瞬間
日本を出発した私たちは、パタゴニアの最高峰、フィッツ・ロイの麓にあるエル・チャルテンの町までやってきました。翌日さっそく、標高3,405mの壮大な山容を拝むべく展望台までトレッキング。青空のもとゆるやかな登山道を軽快に進み、ほぼ予定通りに到着。そこには、ベールをまとうかのように雲をかぶった鋭く険しいフィッツ・ロイの姿がありました。「煙を吐く山」の異名をとる名峰を眺めながら、ずいぶん遠くまで来たなあとしみじみ感じたひとときです。
視界に入り切らないほどのさまざまな青が織りなす氷河を求めて
翌日はペリト・モレノ氷河を目指して、南へ約220kmのエル・カラファテの町に向かいます。スピードを出したくなるような一本道を駆け抜け、約1時間半でペリト・モレノ氷河を有するロス・グラシアレス国立公園の入口ゲートに着きました。
かつて写真で見たスケールの大きな氷河ともうすぐ対面だ…。展望台へと急ぐと、そこで待っていたのは全体像がつかめないほど巨大な、はるか遠くまで広がる氷塊のカーペット。地球温暖化が叫ばれる昨今でも成長を続ける「生きた氷河」を前に、青い光を放つ氷河の、想像以上の迫力に身震いしました。
しばらくその場で氷河の大パノラマを眺めていたら、パキンという乾いた音がしました。続いてカランカランという軽やかな響きが聞こえたと思ったら、ズザァーンという派手な音を立てて、氷河の一部が崩落…!もう一度崩れる瞬間を見たいと、気づけばその場に約5時間も滞在。それでもペリト・モレノ氷河は見飽きることがありませんでした。
世界の南の端にある土地で遭遇したファニーないきものに釘付け
それから1週間後。当時世界最南端だった都市ウシュアイアに到達しました。寒風が吹きすさぶ不毛の大地を象徴するのは、斜めに傾いて生えている木。一年を通して西からの強風がやまないこの辺り一帯は、立ち止まった途端に吹き飛ばされそうになるほどです。
パタゴニアの旅のハイライトは、ウシュアイアの沖合に浮かぶマルティージョ島でペンギンに会うことです。1万羽ものマゼランペンギンが暮らす「ペンギンの楽園」へは、船で向かいます。
下船後、ガイドを追って列をなして静かに歩きます。島では単独行動禁止、かつペンギンから常に3m以上離れるというルールがありますが、そんな人間の気配りなどどこ吹く風。ペンギンたちは海に入ったり浜を走ったりして気ままに過ごしていました。
ペンギンの負担にならないよう、島の滞在は1時間だけ。しかし「そろそろ船に戻りましょう!」と、ガイドがそう言っても、誰も動こうとはしません。少しでも長くここにいたい――。何度も何度も促されて、しぶしぶ牛歩並みのゆっくりペースで人間たちは船へと向かい、マルティージョ島を後にするのでした。
〈異国の風に誘われて~世界・家族放浪記~〉次回予告
ここはどこでしょう?
色とりどりのランタン。世界で有名なランタン祭りといえば…?お楽しみに!
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<著者プロフィール>
カメラマン(林澄里)、ライター(林加奈子)のふたりによる、旅にまつわるさまざまな仕事を手がける夫婦ユニット。単行本や雑誌の撮影・執筆、トークイベント出演など、活動は多岐にわたる。近年は息子といっしょに海外へ出かけるのが恒例行事に。著書に『インドホリック』(SPACE SHOWER BOOKS)、『中南米スイッチ』(新紀元社)。https://tabioto.com