海外旅行者の“困った”に応えるアシスタンスセンター
「外国でケガをされたり、体調不良になられたりしたお客さまを、日本語でサポートしながら、医師・病院の紹介や手配をし、困りごとを解決するのが私たちの仕事です」
そう話すのは、AIG損保の海外旅行アシスタンスセンターでトラベル・アシスタンス・コーディネーターを務める比嘉亜樹だ。沖縄県に生まれ、高校生の時にアメリカへ留学。帰国後、県外の大学で学び、卒業後はUターンをして同センターに就職。海外で培った英語力を用いて勤務し、今年で8年目になる。
同センターには、海外にいるお客さまからさまざまな相談が舞いこむ。最も多いのは、ケガや病気に関する連絡だ。
この日、3件目の電話対応を終えた比嘉はパソコンに向かいながら、はれやかな笑顔を見せた。「腹痛で入院されていたお客さまが、現地の病院を無事に退院されました。うれしいですね!」。
比嘉たちコーディネーターがお客さまからケガや病気の連絡を受けた場合、適切な医院を探し、受診の予約をとり、回復までの経過を見守る。その後、保険金の支払い担当へ引き継ぎをする。お客さまが重病や重傷になった場合には、AIGグループの海外拠点に連絡し、医療従事者を現地へ派遣して、日本へ帰国できるようサポートするケースもある。
「私がよくやりとりをするのはマレーシアのクアラルンプール、あるいはアメリカのヒューストンなどです。ここにはAIGの医療部があって、医師や看護師が常に世界中の医療情報を確認しています。病気について不明な点があったときは、ここに問い合わせて正確な情報を入手します。まさに外資系であるAIGならではの強みといえますね」
センター内では、AIGのネットワークによって世界中の災害や事故、交通ストライキといった最新ニュースも常に共有されている。
予測できる未来をさりげなく伝える
「お電話をくださっているのはご本人さまでしょうか? ご契約内容を確認します」
「もしよければ、現地の病院の受診予約をお取りしましょうか?」
この日も落ち着いて電話対応を進めていた比嘉だったが、とある電話で顔色が変わった。アメリカに留学中だという10代の女性からの入電だった。
「小さい頃からピーナッツアレルギーがあるのですが、夕食のデザートのケーキに入っていたみたいなんです。でも、どうしていいかわからなくて…」。
比嘉が時計を見ると、現地時間は23時。体調に変化がないのか、女性の口調に慌てた様子はない。アメリカでは医療費が高額になりがちで、受診するより市販薬を飲んで治すほうが一般的だ。とはいえ、薬局はすでに閉まっている。そこで女性は対応に困ったようだった。
一方、比嘉は青ざめていた。今は異常がなくとも、これからアナフィラキシーショックによって容体が急変する恐れもある。万一その事態が起きてしまえば、できる処置には限界がある。そうなる前に、一刻も早く病院を受診したほうがいい。
比嘉は、すばやく最寄りの救急病院の場所を伝え、強く受診を勧めた。保険付帯のキャッシュレスサービスがあるため、支払いは不要だ。比嘉の声から深刻な事態を察した女性は、「ありがとう、すぐに行ってみます!」そう答えて通話を終えた。
比嘉をはじめとするコーディネーターたちは、電話を受けた瞬間から、お客さまの身にこれから起こりえる未来を予測し続けている。
「とくに病気やケガの対応は、スピードと正確性が問われます。限られた時間の中で、素早く的確にお客さまの願いを叶えるためには、語られる内容だけではなく、契約内容や滞在期間、入電時刻なども手がかりにすることもあります」
たとえば同じ体調不良でも、短期旅行者であれば、わかりやすい場所にあって日本語も通じる大病院を案内する。一方、長期滞在者であれば土地勘があるとみて、わかりにくい場所であっても、より希望に合致する病院を探す。
入電時が何曜日の何時なのかというチェックも欠かせない。もしも夜中であれば、それでも連絡してきたことから緊急性が高いことがわかる。また、現地の医院が週末に休むようなら金曜日までに受診したほうがよい場合もある。
「慣れない国で自分の身に起こる未来を予想するのはむずかしいこと。だから、私たちが“先に起こるかもしれないこと”をお伝えして、一緒にベストな方法を探していきます」
短い通話の中では、十分に伝え切れない時もある。だからこそ、比嘉は声のトーンに気をつけ、シンプルに、わかりやすく伝えるために全力を尽くす。そして、通話の後はかならず同じ内容をメールでも送信する。
「大切なのは、お客さまのニーズがどこにあるかを正確に把握すること」。その基本に立ち戻りながら、比嘉は今日も受電コールをとる。
日本と海外を幸せな形で結ぶ“架け橋”になりたい
「聞いてください! 病院食がひどいんです。牛乳とクラッカーだけなんですよ。こんなことじゃ治るものも治りません…」
その日、イギリスの病院から連絡してきた男性の声は怒っていた。海外では、病院食が簡素なケースはめずらしくない。それがスタンダードであることを比嘉が話すと、ようやく男性の怒りがやわらいだ。
「私たちは日頃から各国の文化の違いがよく見える立場にあります。だから、普段からできるだけ日本とその国の文化の違いを丁寧にお伝えするようにしています。知らないとイライラしてしまうけれど、相手の事情を知れば、気持ちをポジティブな方向へ切り変えていけると思うからです」
対応を終えた比嘉の元には、「海外ではまずない手厚い対応に感動しました」「久々に日本語で密にやりとりができて安心しました」「事情を細かく汲んでくれて本当にありがとう!」日々、こうした声やメールが届く。
世界的に見ても、サービス業の水準が高いといわれる日本。その地に生まれ育ったことは、大きな“強み”になると比嘉は考える。良い手本が周りにたくさんあるからだ。
「AIG損保の一員として世界を知っているという長所、そして、日本人ならでは気遣いと優しさを発揮できるという長所を生かしながら、日本と海外のそれぞれの良さや特徴をわかりやすく、細やかに伝えていきたい。これからも、日本と海外がともに良い方向に進んでいけるように、温かい“架け橋”になれることを目指し続けます」