複雑な海外事業の保険こそ「腕の見せどころ」
暮らしはもちろん、産業を支えるためにも欠かせない「電力」。日系のグローバル企業は海外で発電プラントなどのエネルギー関連施設を建設したり、そこに出資したりする。その場合に、大規模な事業であるがゆえに、現地の保険会社による保険のほか、日本の保険会社で再保険を引き受けることがある。
AIG損保ブローカー&クライアント・エンゲージメント部の高田よしのは海外にある発電プラントなどの再保険手配を担当して6年になる。
2012年に新卒で入社した高田は、個人保険の営業を経て、2018年に現部署へ異動。お客さまである日本企業をはじめ、国内外のブローカーなど多くのステークホルダーの間に入り、保険の提案などをサポートしている。
海外の大規模物件に対する再保険をリーダー(幹事保険会社)として提案する際は、高い調整力が問われる。「言語の壁、法律の壁、文化の壁…もう大変なことだらけです。でも、外資系であるAIGの強みを活かせば、そのような壁も乗り越えられる。腕の見せどころですね」と高田。
保険ブローカーなどを通じて再保険手配の依頼が来ると、高田は保険の引受けを行うアンダーライターにブローカーが作成した補償条件書の内容を伝える。同時並行で、現場を見てリスクを判断するリスクエンジニアが現地のプラントを視察。アンダーライターは、現地の調査報告をもとに引受判断を行い、保険を設計する。そして、見積り条件を高田がお客さまに提案し、調整し、締結するという流れだ。
過去に、高田は「現地視察中のリスクエンジニアが、現場で対処が必要と思われる箇所を見つけた」との報告を受け、すぐにお客さまと会議の席を設けたことがある。報告は専門的で難解な内容だったが、問題点をできるだけ分かりやすく伝えたところ、お客さまもすぐに状況を理解し、関係者が一斉に解決に向けて動き出すことができたという。
この発電プラントは、現在に至るまで順調に操業中だ。現地の人々の暮らしを支え、国が発展していく上で欠かせない存在となっている。
「AIGグループが世界に広く展開し、長い時間をかけて蓄えてきた知見を使って、お客さまやステークホルダーのみなさまとともにベストな保険を一から作りあげていける。契約を結んだ後も、社会に貢献されているお客さまを、保険でお守りできる。本当にうれしいことです」と高田は笑顔を見せる。
お客さまの思いに寄り添うことから始めたい
今、AIGグループは約190の国や地域に展開しており、AIG損保内では世界各国に在籍する社員や専門家たちからリアルタイムで活きた情報が共有されている。世界中に広がるこのネットワークの本領発揮は、リスク予防だけにとどまらない。
「多くのお客さまが評価してくださるのが『事故が起きた際の対応力』です。たとえば、グローバル企業が海外で事業を行うなかで、現地で訴訟を起こされることがあります。訴訟対応は国や地域によって異なるため、通常なら現地の弁護士を探すところから始まるのですが、AIGグループは弁護士事務所との提携ネットワークがあるため、いち早く対応にあたることができるのです」
海外で訴訟が発生したとの報告を受けたとき、高田は速やかに損害サービス部門に連携し、専門家チームが編成される。海外訴訟の対応を専門にしている損害サービスの担当者が日本と現地からそれぞれ参加し、現地の弁護士とともに全員で戦略を練る。
「こうした動きが早ければ早いほど、裁判までの準備期間が増えます。つまり、裁判の成りゆきをあらゆる角度から予測し、お客さまにとってのベストを何度も検討できるということ。訴訟対応を含め、事故対応はスピードが命です」
一方、時間との勝負だとわかっているからこそ「あわてず、細心に」。これも高田の信条だ。
「相反するようですが、“急がば回れ”の意識も大切。12年にわたって保険の提案や締結のサポートを行ってきたこれまでの知見を生かして、直感がはたらくことも増えました。何か違和感がある時は、『お客さまは本当にこれを望まれているだろうか』『ここはもう一度社内の意見を聞いてみようか』と、一度立ち止まって探る時間も大切にしています」
たとえ手間のかかることだったとしても、違和感が消えるまで確認する習慣が身にしみついている。大規模な案件を取扱う現場では、スピードはもちろん、大胆な決断を迫られることもあるからだ。
「いざというときに迷わず最良の選択ができるように、日頃から緻密な対応を重ねていきたい」と高田。大きなチャレンジに向かって果敢な一歩を踏み出そうとするお客さまに、足並みをそろえ、ともに歩き出すためだ。
今後、グローバル企業が世界中でさまざまなビジネスを展開するにつれて、従来にはなかったリスクの相談が増えてゆくだろう。
「当社にとってチャレンジングな分野も出てくると思いますが、まずはお客さまの思いに寄り添うことから始めたい。お客さまが取り組まれているビジネスを理解して、応援したい。そんな気持ちで、詳しくお話を伺っています。お客さまとともに私たちもアップデートしていければ、きっと時代にあった保険をこれからも生み出していけるはずですから」