リアルストーリーズ

激甚化する災害 企業の有益な備えは

台風や地震など甚大な被害をもたらす自然災害が増えている昨今、ビジネスへの影響がますます懸念されている。危機に瀕した時に適切な行動をとれなければ、会社の財産や従業員の生命を守れず、損害が拡大する。操業停止の期間も長引き、取引先を失い、再建の目処がたたなくなって廃業に追い込まれるケースもありうる。

こうした事態を避けるため、AIG損保では「中小企業強靱化プロジェクト」として、中小企業の防災や減災、事業継続のためのサポートを続けてきた。そのうちの一つが、AIG損保がコラボレーションしている三井不動産グループのアンドレジリエンス社が提供する「&Resilience(アンドレジリエンス)(※)」を活用したリスクコンサルティングサービスだ。

「&Resilienceのサービスに、過去の災害事例にもとづいたシナリオで被災を体験できるセミナーがあるんです。私もこのセミナーに参加し、実際に大地震を体験しました」

名古屋市のCCA中部支店に勤める佐脇秀樹はそう語る。

「様々な状況が錯綜(情報が殺到)する中にあって、素早い判断を行わなければ人の生死に直結するような状況下では、ほとんど何も決断できませんでした」

いざ災害が発生すれば、立ち止まって対策を考えている時間はない。会社の防災マニュアルも、形式的なものでは役に立たない。佐脇は、災害のリスクヘッジについて学びを深め、アンドレジリエンス社の独自資格である「事業継続力診断士」を取得した。

「体験セミナーを通じて、あらかじめ具体的に細やかに、現実的な対策を準備しておく必要性を痛感しました。だからこそ今のうちに、一つでも多くの企業に、その会社が置かれている現状とリスクを知らせ、実現可能な対策をあらかじめ考えられる機会を届けたいと思ったんです」

国の制度「事業継続力強化計画」を活用して備える

現在、佐脇は各企業に積極的に提案し、中小企業庁が推進する「事業継続力強化計画」の認定取得をサポートしている。

「この『事業継続力強化計画』とは、被災前の対策と被災時の初動対策にフォーカスして、『いつまでに・何をして・どう実現するか』を具体的に計画するというもの。それが適切な計画であれば、経済産業大臣から認定を受けられる制度なのです」

認定を受けた企業は、国からの税制措置や金融支援、防災・減災設備の購入支援などが受けられるほか、ホームページや名刺に認定マークを入れて万一への備えをアピールできるなど、メリットは多い。

しかし、佐脇によれば「企業側の認知度は、3割程度で、実際の認定取得率はさらにその半分にとどまる印象」だと言う。

「取得のハードルになっているのは、『ヒト・モノ・カネ・情報』の4分野にわたって、被災時の対応を細かく具体的に定め、それらを書面に一つひとつ記載しなければならないこと。だからこそ被災時に役立つといえるのですが、担当者が自社の抱えるリスクを網羅的に調べあげ、それぞれに適切な対策を定めていくというのは至難の業です」

取得のハードルに悩む企業にソリューションを

これまでに数多くの企業の認定取得をサポートしてきた佐脇だが、「お客さまの多くは災害対策の必要性は感じつつ、膨大な時間と労力がかかるために手をつけられなかったとおっしゃいます」と振り返る。

そうした企業の悩みを解決するのが、&Resilienceの「事業継続力強化計画作成ツール」だ。1問1答形式でリスクに関する16の質問に答えるだけで、申請書のドラフトができあがる。

「実際にパソコンを開いて質問に答えるのはお客さまなので、私は隣で見守っています。『これはどういう意味?』『お客さまの会社で言うなら、こういう趣旨のことを聞かれています』などと話しながら一つひとつ答えていくと、その企業が自然災害に直面した際に抱えるリスクが可視化できるようになるんです」

 

加えて、佐脇はその会社の所在地で過去30年間に起きた自然災害の事例、その地域固有のリスクなどをまとめたレポートも用意する。こうして、さまざまな角度から脆弱な点をあぶりだし、アドバイスを交えながら、お客さまとともに弱点を補うための対策を練っていく。

16ある全ての質問に回答し終えたら、お客さまとドラフトを精査して清書する。あとはオンラインで書面を提出すれば、申請は完了だ。

「ここまでの所要時間は、あわせて3〜4時間ほど。お客さまには、時間と労力が大幅に削減できたといって非常に喜んでいただけています。やりがいがありますね」

事業継続の手段を考える絶好の機会に

質問に答えていくお客さまの様子を間近で見ていると、「その想定はなかった…」「この対策はやっていない」「これもしていない」「これも…」と、次第に気まずい空気が漂いはじめる。「大丈夫ですよ、まずは正確に現状を把握しましょう!」と佐脇は声をかける。どんな設問があるのか。

「たとえば、“お金”の部分では『事業を継続するために必要な資金の額』と『調達方法』を聞かれます。この場合、調達方法は保険金になることが多いですね。そこで、どんな保険に入っていたかをこのタイミングで調べ直すことになります。すると、現状の保険では事業継続のための資金として金額が足りないことがわかるケースも多々あるんです」

 

長年そのままだった保険を見直す機会になるほか、「とくにお金の対策は事業継続の要。重要な部分なので『今のうちにわかってよかった』と言ってもらえると、いつもホッとします」と佐脇はほほえむ。

「災害が起きた時のことをシミュレーションして、具体的に対策を練るのは労力のかかる作業ですが、必ずお客さまにとって“転ばぬ先の杖”になるはず。これからも、少しでも早く一社でも多くのお客さまとともに、有益な対策を講じていきたいですね」

  • 三井不動産グループのアンドレジリエンス社が提供する事業継続計画(BCP)の策定から運用・改善までを支援する定額・会員制コンサルティングサービスのこと

<プロフィール>

佐脇 秀樹(さわき ひでき)
広告代理店の映像企画・制作職を経て、2018年AIG損害保険株式会社に入社。直販型営業社員であるインシュアランスコンサルタントとして、中部地方の企業を主な顧客としている。

掲載情報はすべて掲載時のものです。

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