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固定金利? 変動金利? これからの住宅ローンはどうすればいい?

■人生最大の買い物? マイホーム購入と住宅ローン

■人生最大の買い物? マイホーム購入と住宅ローン

マイホームの購入は、しばしば人生最大の買い物といわれます。一般的には数千万円、あるいはそれ以上のお金を借り、数十年をかけて返済をしていく、「長い買い物」です。

日本では、おおむね8割の高齢者世帯は持ち家、つまりマイホームに暮らしています。ほとんどの人が、現役時代に住宅取得を考え、ローンを組んでいるわけです。

人生最大の買い物の多くを住宅ローンに頼るということは、人生最大の借入をするということで、マイホーム購入の特徴といえます。そして同時に、最長の借入をするのが住宅ローンです。

この住宅ローン、私たちを常に悩ませるわけですが、これから住宅を購入しようとしている人、そしてすでに住宅ローンを設定済みだが変動金利を選択した人は、もしかすると2024年は検討が必要な年になるかもしれません。

というのは、今世紀に入ってから超低金利がずっと続いていたのですが、その流れに変化の兆しが見えてきたからです。

出典:総務省統計局「高齢者のいる世帯の状況」高齢者のいる世帯の状況
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2008/nihon/7_1.html
出典:日本経済新聞「11月の住宅ローン固定金利、12年ぶり高水準 メガバンク」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB31BXS0R31C23A0000000/

■金利上昇の影響は大きい 住宅ローン金利に2024年、変化が起きる?

■金利上昇の影響は大きい 住宅ローン金利に2024年、変化が起きる?

現在、固定金利のローン設定がじわりと上昇傾向にあります。

デフレ局面からの脱却を目指して、マイナス金利政策と言われる金利政策が長年行われていましたが、これは住宅ローン金利を低く抑えることにもつながっていました。

ところが、物価上昇の局面に社会が変化しつつある中で、日銀の金利政策が変化する可能性を見越してか民間金融機関の動きが出始めています。10年などの長期固定金利である住宅ローン金利はじわりと上昇している傾向にあるのです。

金利の影響はそれほど大きなものなのでしょうか。実はかなり大きな意味があります。

仮に4,000万円のローンを35年返済で組むとします。金利が年1.0%の場合、毎月返済額は112,914円(ボーナス返済なし)、総返済額は4,742.4万円になります。

これがもし金利年3.0%になったとすれば、毎月返済額は153,940円(ボーナス返済なし)、総返済額は6,465.5万円にもなります。毎月の返済額、総返済額のどちらをみても、高額の借入と、長期返済には金利の動向が大きく影響することが分かります。

こうしたローン金利は、返済初期に大きな影響が生じます。残高が1,000万円を切ってくると年2.0%の違いは年20万円の違いですが、借入直後4,000万円では年80万円の違いとなり、返済額の数カ月分にもなってしまうため、なかなか元本が減っていかないからです。

参考:知るぽると 住宅ローンシミュレーター
https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/sikin/menu/r_kariire.html

  • 「2022年度フラット35利用者調査」から、建売住宅購入時の借入額平均3,185万円を前提に4,000万円で試算

■これからの住宅ローン 変動金利か固定金利か 

■これからの住宅ローン 変動金利か固定金利か 

住宅ローンは普通のローンと比べて大きな特徴が3つあります。1つは「高額のローン」であること。2つは「長期のローン」であること、そして3つは「低利のローン」になることです。

金額が大きいことと返済期間が長期に及ぶことは既に述べました。これに加えて住宅ローンは他のローンと比べて低金利で設定されます。例えばクレジットカードのキャッシングなどには年15~18%前後の利息が課せられますが、住宅ローンは年1~4%というように低く設定されています(執筆時点。今後は上昇の可能性あり)。

これは担保としてその家が存在するため、貸し手側(銀行等)のリスクを低く設定することができるからです。また、フラット35のように国と民間で連携することにより低金利を実現し、国民が住宅取得をしやすいような環境を整えていることも低金利で借りられる一因です。

金利についてもう少し詳しく見ると「固定金利」か「変動金利」かがローン設定時の大きな選択肢となります。固定金利というのは返済期間が終了するまで、あるいは10年のような長期で金利を不変とする住宅ローン契約です。これに対して変動金利というのは予め定めた数年ごとに金利を見直す仕組みになります。

近年の傾向として、一般には固定金利設定をするほうが金利は高くなり、変動金利を設定したほうが金利は低くなります。ただし、変動金利の見直し時期に固定金利を上回る金利に見直される可能性もあります。

フラット35のように借りた段階で返し終えるまでの金利を確定させてしまうか、とりあえずは低金利で借りられる変動金利を選ぶかは、住宅ローンを検討する際の最大の難問です。

これから住宅ローン金利がもっと上昇していくと考えるならば、数年で見直しが行われる変動金利ではなく固定金利、できれば返済終了時点まで金利が固定されるフラット35を上手に活用したほうがいいかもしれません。

■とはいえ焦りは禁物 じっくり検討して決断しよう

■とはいえ焦りは禁物 じっくり検討して決断しよう

冒頭で、「これから」住宅ローンを組む人と「すでに変動金利で」住宅ローンを組んでいる人は検討が必要な年になるかもしれない、と言いました。

すでに変動金利で住宅ローンを組んでいる人たちは、数年後の見直し時には今の低金利が反映されない可能性があることを意識しておきましょう。

心配なら銀行のローン相談会などで見直しの検討をしてみてください。数年後に「え、こんなに返済額がアップするの?」とびっくりしないように準備をしておきたいものです。

住宅購入はまだこれから、という人はどうすればいいでしょうか。「金利が上がるのは大変! じゃあ2024年は急いで家を買わなくちゃ」と焦ってはいけません。

住宅購入はローンだけの問題ではありません。例えば、

  • 夫婦の共働きやキャリアアップを検討し、返済余力を高める
  • 頭金をしっかり貯めて、借入額を減らす
  • 過不足のない広さと価格の物件選びをこだわる

といった、ローン審査に入る前のいろいろな検討も大切だからです。金利だけを気にするあまり、結果として使い勝手の悪い家を衝動買いのように買って、何十年も後悔し続けるのでは本末転倒です。

勢いあまって高額の物件を選んでしまい、苦しい返済計画を立ててしまった人は、返済を続けていくだけで日々の生活が精一杯、なんてことになってしまいます。これもおかしな話です。

家は人生最大の買い物です。だとしたら、人生で一番、悩んで、考えて、家族でじっくり話し合ってから決断したいものです。

金利が動き出した今、住宅購入には難しいタイミングになりますが、後悔のないように人生最大の買い物を決断してみてください。

山崎俊輔 やまさき・しゅんすけ
1972年生まれ。
フィナンシャル・ウィズダム代表。投資教育家。
企業年金コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー、消費生活アドバイザー、1級DCプランナー。

確定拠出年金を中心とした企業年金制度と投資教育が専門。ニュースサイトや雑誌、新聞等での執筆や講演多数。
近著に「ファイナンシャル・ウェルビーイング」「新NISAとiDeCoでお金を増やす方法」」がある。

twitter @yam_syun
HP http://financialwisdom.jp

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