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ほとんど増えない銀行預金 低金利から急上昇はある?

■銀行の金利が100倍にアップした?

最近「銀行の金利がアップしたらしい」というニュースを耳にしたことがあるかもしれません。

メガバンクが、長期預け入れを行う高額の定期預金について従前の金利から100倍に見直しをした、ということが昨年話題となりました。

「え、100倍!」とびっくりするかもしれませんが、よくよくみると年0.002%の利回りが年0.2%にアップしたという「100倍」です。0.2%ということは1万円に1年後につく利息が20円(税引き前)ということで、まだまだ金利が低いことには変わりがありません。

かといって、「銀行預金は全然増えないもの」という、ここしばらくの常識が変わり始める兆しといえるかもしれません。

これからの銀行預金金利の動きについて、少し考えてみましょう。

■銀行預金は「安全確実だが低利回り」の増やし方

銀行預金は金融機関が破たんしない限り、全額が保証され、利息が上乗せされるお金の増やし方です(破たん時も元本1000万円までは保証されるペイオフという仕組みがあります)。

銀行預金は、お金を確実に貯め増やしていくための大切な選択肢のひとつです。一方で、増え方にはいくつかの原則があります。

  • 長期で預けると金利が上がる……いつでもおろせる普通預金と一定期間おろさないことを約束する定期預金では、定期預金のほうが金利がアップします。定期預金の中でも1カ月定期のような満期がすぐ来るものと10年定期のように長期のものでは、原則的に長期のほうが金利が高くなります。
  • まとまった金額を預けると金利が上がる……1円単位で自由に預ける普通預金より、300万円以上(スーパー定期)、1000万円以上(大口定期)のようにまとまった金額を入金すると金利が高くなります。
  • 金融機関によって金利は異なることがある……銀行はそれぞれの判断で金利を設定できます。メガバンク3行は大きな違いがないものの、ネット専業銀行などではメガバンクを上回る金利を提示することもあり、違いが現れています。金融機関選びで金利が大きく違ってくる可能性があることを知っておく必要があります。
  • 世の中の情勢によって金利は変化する……金利はおおむね、物価上昇率に連動します。かつて銀行預金には6~7%もの利息がつきましたが、同時期には物価も同水準の上昇が見られていたのです。

■金利が上がっても、現状では実質マイナス状態

銀行預金の利率の仕組みを紹介しましたが、今しっかり考えておくべきは「物価上昇率」との比較をする目線です。

ここ数十年はほとんど物価が上昇していませんでしたが、最近はモノの値段が上がり始めています。食品の一部や電気代・ガス代など数年で10~20%以上上昇したものもたくさんあります。

2023年の平均では年3.2%の物価上昇が見られています。

銀行に1年間預けたお金で、1年前に買えたものと同じものを買いたいとすれば1年後には10,320円に増えている必要があります。

だとすれば、3.2%の利息がつかなければ、銀行預金は実質的には目減りしているということです。今はまだ年3.2%も利息をつけてくれる銀行がありません。

物価上昇率と比較をして増えたかどうかを考える感覚、なかなか難しいところですが、金利が変化し始めた初期には知っておかないといけない「お金の基本ルール」です。

■銀行金利は日本銀行の政策と物価動向の影響を受ける 2024年は変化があるか

物価が上がれば、銀行預金の金利も上昇する、というのは原則ではあるものの(そうしないと、誰も銀行に預けたいと思わなくなる)、もうひとつ銀行預金の金利を決める条件があります。

それは国の、正確に言えば日本銀行の政策です。現在はマイナス金利政策により景気の安定と再浮上を目指す取り組みが行われており、国全体として金利を抑える取り組みがなされています。これは銀行預金金利や住宅ローン金利を超低金利とする要因となっています。

しかし今、日本経済に復活の兆しがみえ、賃金上昇や物価上昇も生じ始めている段階にあり、このマイナス金利政策の見直しが行われるかどうかが2024年に注目されています。

見直しがあったらすぐに預金金利が2.0%以上にアップするわけではないものの、預金金利上昇(と前回紹介したような住宅ローン金利上昇)が実現する最初の関門が開いた、ということにはなります。

■銀行の預金金利に2024年は注目してみよう

今まで数十年のあいだは、物価が上昇しなかったこともあって、銀行預金が増えるかどうかはほとんど関心のないことでした。

一時期は年0.001%という状態でしたから、金利より大事なことはATMの時間外手数料のような負担をしないことでした。

時間外手数料を支払わないことも大切ですが、これから大切になるのは銀行を金利の面でもチェックしていくことです。

例えば「コンビニATMも無料だしスマホアプリからの振込も便利だけれど、低金利」という銀行が現れたり「何度も出金をすると手数料を取るけれど、高金利」という銀行が現れたりするかもしれません。

あるいは、グループの他社サービスを利用している人に優遇金利を上乗せするような戦略をとる銀行も出てくるでしょう。

銀行のサービスを総合的に判断し、その中で金利もチェックしていく時代がやってきます。2024年はあなたの銀行の金利に注目してみてはいかがでしょうか。

山崎俊輔 やまさき・しゅんすけ
1972年生まれ。
フィナンシャル・ウィズダム代表。投資教育家。
企業年金コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー、消費生活アドバイザー、1級DCプランナー。

確定拠出年金を中心とした企業年金制度と投資教育が専門。ニュースサイトや雑誌、新聞等での執筆や講演多数。
近著に「ファイナンシャル・ウェルビーイング」「新NISAとiDeCoでお金を増やす方法」」がある。

twitter @yam_syun
HP http://financialwisdom.jp

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