2023/03/09
アメリカなどいくつかの国で、3月は「女性史月間」。加えて3月8日は、国連が定めた「国際女性デー」です。女性の権利と政治的、経済的分野への参加を推進するために制定されたこの日にちなみ、AIGグループの「女性活躍」を体現するメンバー5人に集まってもらいました。見えてきたのは、「男性の方がリーダーに向いている」という思い込み……。
女性だけでなく、リーダーシップ育成に悩む多くの人にも“気づき”を与える話が聞けました。今回はそんな座談会の様子【後編】です。
【前編】「優れたリーダーは「資質ではなく経験」から生まれるという真理」はこちらをご覧ください。
対談に集まった「Women&Allies ERG」を率いる運営リードメンバーの歴代プレジデント5人
(上段左から)
荒井 優果:AIG損害保険 個人セグメント損害サービス統括部 シニアマネージャー(2代目プレジデント)
齋藤 友香:AIG損害保険 ディストリビューション部門 CDO室 戦略担当リード(3代目)
大澤 真衣:AIG損害保険 自動車保険部 マネージャー(4代目)
(下段左から)
貫井 早苗:AIG損害保険 自動車保険部 マネージャー(6代目)
慶徳 紗枝:アメリカンホーム 傷害・火災・自動車保険金サービス部 マネージャー (7代目)
キャリアも子育ても柔軟に、「完璧」は求めない
━━ 子育ても、仕事も、加えてWomen&Allies ERGのリードメンバーとしても活動もバランスよく続ける秘訣は何でしょうか?
大澤:組織の土台をつくってくれた草創期のリードメンバーである荒井さん、齋藤さんが柔軟な運営にしてくれたからこそ、続けられたのだと思います。ムリをすると何もかもが続きませんよね。イベントも参加者の勧誘もノルマ化してしまったらきついだけですが、どのくらいやりたいイベントなのかという気持ちを大事にするチームなので、がんばりが効く。
齋藤:Women&Allies ERGは社員が自発的にやっているグループとはいえ、会社から活動費が出ていることもありビジネスレベルの報告書作成が必要となります。運営会議進行ももちろんビジネスレベル。とても勉強になりましたが、すべてを完璧にと考えていたらどんなにやる気がある人でも2年という期間を務められないと感じていました。やらなければいけないことをフォーマット化して、省力化できるところは省いていきましたね。
大澤:実はプレジデントを引き受けたところで妊娠しまして。産休・育休中も滞ることなく運営できるように、「トップを2人体制にする」ということを提案しました。当時、共同プレジデントとして、私の育休中にプレジデントを務めていた相方(笑)は、私の復帰の後にちょうど育休に入りました。トップ2人で回したことで、お互いバックアップしながら子育てに向き合えましたし、鏡のようにお互いフィードバックしながら成長してきたように思います。
自分ひとりで考えると、子育てのこと、キャリアのこと、いろいろな壁にぶつかり行き詰ったりしますが、運営メンバーがその都度、その都度、一緒に考えていこうと言ってくれて柔軟に考えられるようになりました。仕事でも同様、できない理由は考えず、できるようにするにはどうしたらいいかを考えるようになりましたね。
荒井:「参加者名簿は帰宅後、夜中に作ろう」といった自己犠牲を強いる運営では、誰もリーダーをやりたくないのは当然です。私はそうしてしまったのですが(笑)、組織の持続性を考えたらどういった形がいいかを考えることはリーダーとしての大事な役割だと学びました。仕事の上で管理職になってからも「持続可能な組織の形になっているか?」と常に自分に問いかけています。
「できない」を「できる」に変える心理的安全性
貫井:歳を重ねれば重ねるほど「考え方」を変えることは難しくなっていきませんか? だけどWomen&Allies ERGで活動していたら自然と「できない理由は考えず、できるようにするにはどうしたらいいかを考える」自分に変化していました。これは、Women&Allies ERGというグループに心理的安全性があるからできたことだと思うんです。
失敗してもいいチャレンジできる場で、まずは自分の考えを発言してみる。次に小さい会議でファシリテートしてみる。報告書を作ってみてビジネス文書作成のスキルを身につける……。「できる」の積み重ねで自信がつき、自分の価値観や志などを躊躇せず発信できるようになり、考え方が変わってきたように感じています。Women&Allies ERGではこれからも、失敗を恐れずチャレンジできる場を継続的に提供していきたいですね。
慶徳:続けることは、とても大事で最も難しいことです。育児、介護、仕事で大変な立場になったときなど、自分にも周囲の人にも言い訳が効くタイミングでやめてしまうほうが、誰にとってもいい気がしてしまうこともあります。でもそんな辛い状況でも、細々とでも続けていれば違う形で道が開けることもある。私自身、そうやってできないときは安心して「できない」と周囲に助けを求め、また余裕ができたら活動量を増やすといった形で細々と続けてきて、プレジデントとしての今があります。
Women&Allies ERGというグループも私自身も、完璧じゃないならやめた方がいいという考え方では今の形にならなかったと思うんです。その時々、状況の変化に応じて形を変えて存在すること。この先、プレジデントとして活動したことはずっと誇れます。
大澤:Women&Allies ERGの存在って、保険に似てますね。人生で危機に直面したとき、道幅が細くても一歩、一歩と先に進むための力になる。細い道でも歩き続けていたら、大きく道が開かれていると感じられるときがくるんですよね。
荒井:Women&Allies ERGでの経験は、ビジネスの場でも生きてくるんですよ。グループメンバーの勧誘はビジネスにおける採用と同じ。トップとして次のトップの選別、育成、継承という人事的な側面もあります。もちろん、イベントにしても、ただ企画をすればいいというものではありません。
荒井:私の後のプレジデントの時代には、小難しい話ばかりでは人が集まらないから集客力があるヨガイベントを企画するなどの工夫をしています。「結果を出す」企画・運営力が付くんです。いわばスタートアップ創業に近い経験を積み、スキルを手にすることができる。Women&Allies ERGのグループメンバーから、ビジネス面でもリードできる人材が次々と誕生する日もそう遠くない気がしています。
「女性活躍」の先入観を取っ払った男性メンバーのひとこと
━━ 女性活躍をテーマに活動する社員グループ「Women&Allies ERG」ですが、実はメンバー1370人のうち約3割が男性だというのは本当ですか?
荒井:そうなんですよ。グループ名にもあるように当事者である女性だけでなく、支援者(Allies)として男性も参画しています。「エグゼクティブスポンサー」として、AIG損害保険の執行役員も名を連ねています。
貫井:グループのミッションは、「性別の垣根なく活躍の幅を広げていける会社を目指す」なのに、見まわしてみたら20人ほどの運営リードメンバーが全員女性だったんです。男性目線も必要だなと考え、この人だ!という人物を口説き落としました(笑)。
なぜ、リードメンバーになってくれたのかと聞くと、「貫井さんの熱意におされたんですよ(笑)」と言った後で、「女性リードメンバーしかおらず、男性とのコミュニケーションに課題を持たれていると聞き、協力しようと思いました。イベントやメールマガジン等を熱量をもって創り上げていく姿に触れ素直にすごいと思いましたし、社内外の皆さんにも創り上げていく過程を見てもらいたいと思っています」と言ってくれました。
大澤:男性リードメンバーから投げかけられた「そもそも女性活躍とはどういうことなんでしょうか?」という問いかけにはハッとさせられましたよね。女性管理職比率など世間一般の指標となっている数字はありますが、管理職になることだけが女性の活躍ではないはず。成長が実感できることが活躍していることにつながるんじゃないか……といったような議論が活発になりました。男性メンバーのひとことが、女性メンバーに染み付いていた先入観を取っ払ってくれました。
貫井:たとえるならキャリアは「ジャングルジム」。この言葉、AIGグループのある役員の方からの受け売りなのですが(笑)、上に上がるだけではなく、横に行くのもいい。管理職を目指すのもいいし、業務のなかで幅を広げるのもいい。それぞれの活躍の仕方を尊重するということに、あらためて気づかせてもらえました。いろいろな視点、多様性が新しいことを生み出していくということが実感としてわかりました。
慶徳:今日、この場に集まったWomen&Allies ERGプレジデントの方々の話を聞いて感じたのは、プレジデントは、タスキを次へ、また次へとつなぐ“ひとつの通過点”なのだということ。私も通過点として、しっかり役割をはたしていこうと思います!