2022/08/25
日本の食料自給率、どのくらいか知っていますか?
答えは、農林水産省の直近(2020年度)のデータでは37%(カロリーベース)となっています。ということは、国内で手に取る食料のうち、6割超が海を渡って海外から輸入されたものということになります。
仕事の合間に飲むコーヒーの豆やランチに食べるパスタの原料の小麦からスマホの部品まで、海上輸送を通して手にしているものが数多くあります。今回は、そんな海上輸送とは切っても切れない「外航貨物海上保険サービスMariNet(マリネット)」について、海上保険部長の府中洋子に話を聞きました。
━━「海上保険」は自動車保険と違い、自分には関係のないものと思いがちです。さらに、「外航貨物」というと、難しそうで……。
そうですね。海上保険のなかでも輸送先が海外である場合の、海上・航空・陸上運送中に起こった損害を補償するのが「外航貨物海上保険」になります。専門的な分野なので、専門用語も多く難しそうだと思われるのでしょうね。でも、右手に持って今まさに飲もうとしているコーヒーも、冷蔵庫にあるキムチも、外航貨物海上保険がかけられて手元に届いている。そう考えると、みなさんのいろいろな生活シーンに関係が深い身近な保険なのですよ。
━━なるほど。そんな外航貨物海上保険に関わるサービスの1つに、AIG損保が提供するシステム「MariNet(マリネット)」があるわけですね。
MariNetは、お客さまが輸出入をおこなう際にインターネット上で外航貨物海上保険の申込みから保険証書類の発行までをワンストップで行えるサービスです。2001年に提供を開始してから、なんと20年もの間、ご好評いただいています。
欲しいものがなかなか届かない可能性も?!
━━好評の理由は何ですか?
圧倒的なスピードです。たとえば、スマホやテレビ、パソコンなど身近な電化製品に欠かせない半導体などの電子部品を日本は多く輸出していますが、外航貨物海上保険を手配するのは、半導体の売り主です。保険を手配すると、「保険証券」が発行され、これが船積書類の1つになります。この保険証券、売り手側が銀行で代金を回収する決済の時も、通関の時も必要で重要な書類です。この書類が手元に届くのが遅れたら遅れただけ、代金の回収が遅れ、半導体の到着が遅れる可能性があり、その結果、半導体を使用した製品が作れず市場に出せない…スマホやテレビを最新型に買い替えたいのに製品がない…というようなことも発生しかねません。
MariNetができるまでは、FAXで申し込みを受け付け、自社でカタカタとタイプしてシステムに入力、発行した保険証書類を封筒につめて速達や宅急便などでお客さまへ届けるのが一般的でした。FAXなので、字が読みづらく、タイプミスが発生してまたFAXや入力のし直し、そして再度郵送…いうやりとりも少なくありませんでした。証券に1つでも間違いがあると、先ほども述べた通り、決済や通関に影響が出てしまい、いろんなことが遅れます。この煩雑なやりとりをなんとか簡素化させて、お客さまの負担を減らせないか。ということで開発したのが、これらの作業をオンライン上で完結できるMariNetです。これにより、保険証書類もいち早くお客さまの手元に届けられるようになり、利便性と安心感の両方が満たせるようになったのです。
━━同様のオンラインサービスは、他の損害保険会社でも提供されていると聞きましたが…?
そうなんです。今では他社も提供しています。とはいえ、当社ではいち早くこのようなシステムを稼働させたことで、非常にお客さまにご好評いただきました。ただ、当然改善はしていかなくてはならないので、今回追加したのが、「OCR機能」です。
━━OCR機能??
「OCR(光学文字認識)」というのは、「画像データのテキスト部分を認識し、文字データに変換する」こと。船積書類のインボイスなどを取り込み、その取り込んだ文字データをクリックすることで、簡単にMariNet入力項目に反映できます。
MariNet入力の様子
地味なアップデートだなと思われるかもしれませんが、現場で作業する方々にとっては切実です。船積書類にある文字は、アルファベットや数字の羅列がほとんど。目を凝らして作業しても、タイプミスが出てきます。輸出入される商品は、何十件、何百件と毎日膨大です。それらの動きは、1文字でも入力ミスがあると止まってしまいます。お客さまのこのようなストレスやわずらわしさを軽減するために、OCR機能は追加され、操作性を向上させることによって対応スピードを向上させました。
外資企業ならではのスピード感へのこだわり
━━取り込んだ書類データと入力データ、2つをパソコンの画面上で見比べながらチェック作業ができるのも使い勝手が良さそうです。
インボイスや船荷証券など船積書類を、4つまでアップロードできる仕様になっています。
リモートワーク対応へのニーズも高まり、紙でのやりとりが見直されるなか、オンライン上でどうやってデータを閲覧するのか?そういった観点でもこの機能は役立つと思います。
━━このスピード感を、MariNetが実現できたのはどうしてですか?
MariNetは、たとえば、お客さまが入力した情報をAIGサーバーで受け取ると「自動的に」チェックし、お客さまの元に情報が戻り保険証書類の印刷ができる、といったようにオンライン完結型のサービスでスピードと効率化を目指します。「人的な」チェックをそこに加えると、スピードは間違いなく遅れます。日系・外資問わず日本でビジネスをしている企業は、もともと入力などの作業を丁寧に進め正確性が高いという特徴があります。そこにスピードが加われば、企業としても強みとなりますし、効率化も図れます。
━━なるほど!お客さまの業務の効率化の視点が生み出したサービスがMariNetなのですね。
そうですね。日本の貿易実務には、まだまだ紙ベースのものが少なくないので、改善の余地があると考えています。お客さまのワークフローを効率化することで、保険の提供だけでない支援ができないか、ということで開発されたのがMariNetなのです。
これからも、グローバルな事故対応力に加え、外資系として日本でビジネスをしているという視点を大事にして少しでもお客さまに役立つサービス・取り組みを進めていきたいと考えています。