2022/07/29
2022年4月に改正「道路交通法施行規則」が施行されました。これまで運輸・物流業を営む企業が使用する緑ナンバー車だけが適用範囲だった、アルコールチェック義務。これが、業務で一定の台数以上の車を使う白ナンバー事業者も対象となったのです。
これまで以上に安全運転管理者の業務負担が大きくなる今回の改正。2022年2月にAIG損保が実施した調査によると、一定数の車を業務に使用する中小企業の約半数が、改正についてそもそも認識していない、あるいは未対応という結果(AIG損保調べ)がでており、対応が進んでいないことが伺えます。
「知らなかった」では済まされない今回の法改正と、中小企業向け対策支援サービスについて、AIG損保コマーシャル自動車保険部のマネージャー 岡本 翔吾、マネージャー 三枝 敏二、郭 ユントン ジェシーに話を聞きました。
顧客企業の信用に影響が出る可能性も!?
━━ はじめに、今回の道路交通法改正についてポイントを教えてください。
今回の道路交通法施行規則の改正は、4月と10月、2段階で安全運転管理者に義務化されるものがあります。
2022年4月から、すでに義務化されたのが以下の2つ。
「運転者の運転前後の目視での酒気帯び確認」
「酒気帯びの有無の記録と1年間の保存」
2022年10月から義務化されるのが、
「目視確認に加えて、アルコール検知器による運転者の酒気帯び確認」
「アルコール検知器を常時有効に保持」
という2つです。
━━ これらに対応しなかった企業には、何か罰則などあるのでしょうか?
直接的な罰則はありません。しかし飲酒運転による交通事故は非常に重大な問題であり、運転者の酒気帯び確認をおざなりにして、運転者が飲酒で正常な運転ができない可能性を認識していながら運転をさせれば、飲酒運転のおそれのある者への車両の提供として、「企業の代表者などに対して5年以下の懲役、または100万円以下の罰金」といった刑事責任や、「安全運転管理者の解任処分」という行政責任などが問われる可能性はあります。
━━ それは大変…
そうなんです。刑事責任や行政責任を問われると企業の信用にも関わりかねませんし、そういったリスクがあるにもかかわらず、対応がまだまだできていない中小企業が多いのが現状です。
“一挙両得”のアプリをお客さまに。
━━ 今回の法改正に対応するために、『日報&アルコールチェック記録アプリ』を採用した経緯を教えてください。
ただでさえ安全運転管理者の業務は煩雑です。また、今回の法改正で、更にその業務が増えました。保有する自動車に関して企業が抱えるリスクマネジメントを保険を通じて支援する会社として、法改正への対応をスムーズに進め、業務効率化の手助けができないか…。そこで生まれたのが『日報&アルコールチェック記録アプリ』の紹介サービスです。
━━ 具体的にはどのようなアプリなのでしょうか?
今回の法改正で義務化されることは「酒気帯び確認」「記録」「1年間の保存」です。今回ご紹介するサービスは、「記録」と「1年間の保存」に加えて、社用車に欠かせない運転日報も同時にデジタル化できるといったメリットも兼ね備えています。
今回の法改正以前に、一定数以上の車両を使用し、安全運転管理者が設置されているような企業は、使用日時や走行距離、訪問先などを運転日報として記録することが義務のひとつとして定められています。当社調べによると運転日報は、4割程度の中小企業が紙で管理されているという統計もあります。もともと、当サービスの提供元であるスマートバリュー社は運転日報アプリを単独で提供していましたが、今回の法改正で義務化されるアルコールチェックの部分と日報を合わせてデジタル化することで、管理者の業務軽減にもつながるのではないか、といった私たちのアイデアを採用いただき、日報&アルコールチェック記録アプリが誕生しました。
何と言っても低コストに好評価
━━ 運転管理記録システム「日報&アルコールチェック記録アプリ」の紹介サービスを開始して2カ月が経ちました。期待以上に好評のようですね。
サービス開始から2ケ月間で約1000社の企業の照会がありました。株式会社スマートバリュー社からは通常3300円(税込)/月で提供されるものですが、当社の法人向け自動車保険のお客さまについては契約内容に応じ優待されるので、そこが好評の要因のようです。
━━ 追加コストがおさえられるわけですね。
安全運転管理業務上必要な対応とはいえ、あらたに多額の投資を行うのは、多くの中小企業にとって負担です。ですが、アプリで対応ができる手軽さに加えて、当社の自動車保険のお客さまにとってコストメリットあるサービスにしていただいたので、喜んでくださるお客さまが多いようです。
「なぜこのアプリが必要なのか?」を伝えるガイドブックの存在
━━ 煩雑な業務をこなす企業の安全運転管理者に向けて、見やすいガイドブックも作っていますね。
「道路交通法改正への対応をサポートするアプリがあります。だから使ってください。」と言ったところで、なぜお客さまにそのアプリが必要なのかを伝えなければ、本当の価値も伝わらないと考えました。
━━ガイドブックにはどのようなことが書かれているのでしょうか?
そもそも、今回の道路交通法施行規則改正はどういう経緯で成立したのか、企業それぞれの現状を把握し、また具体的にどういった対応が必要なのかをわかりやすく伝えるためのツールとして、「安全運転管理者用ハンドブック」を作成しました。法改正について全く知らない方、何から始めたらいいのかわからない方でもこの一冊だけで何が変わるのか、どういった対応が必要なのかを完結できるようにという思いで作成しました。
━━ 法改正にかかわる用語は難しいものが多いように感じます。
そうなんです! 正直、私自身当部に異動したてだったので、恥ずかしながら法改正や安全運転管理に関しての知識も理解もかなり乏しかったです。法改正と聞くと難しい言葉の羅列で、読むのがいやになってしまいそうでした(笑)。きっと私と同じような思いを抱く企業も多いのではないかと思い、少しでも役に立てるよう、できるかぎりわかりやすい言葉で、どういった対応が必要か確認できる冊子になるよう心がけました。
たとえば、現状把握をするためのチェックリストには…
- 運転前後の運転者の状態を目視等で確認していますか?
- 酒気帯びの有無は確認していますか?
- 酒気帯び確認の記録簿は用意していますか?
と、YesかNoで答えられる質問項目が並んでいます。すべての解答がYesなら法改正に対応できているということになり、Noがひとつでもあれば対応が不十分ということになります。またその場合にどういった対応が必要なのかがすぐわかるようなページも作成しており、難しく考えずに現状と必要な対応を把握できるようなガイドブックになっています。
━━ とてもわかりやすいですね。
中小企業の安全運転管理者には、総務や事務員の方など、法律の専門家以外の方が担当されることも少なくないと聞いています。法改正と聞くとそれだけでハードルが高いと思っててしまう私のような人もいるかも…と思い、誰にでも受け入れられやすいよう、なるべく「堅い感じ」を減らし、色合いや字体を柔らかくする、イラストも入れるといった視覚的な部分も工夫しました。
━━ アプリとガイドブック、2つのツールを活用すれば、わかりやすく顧客企業に伝えられそうですね。
ありがとうございます。まだまだ多い道路交通法改正未対応の中小企業の皆さまに、法改正の内容や対応の必要性を伝えていくのも、まさかが起こる前にリスクを予防する支援を行う、事業戦略コンセプトの「ACTIVE CARE」を掲げる当社の大切な役割のひとつと考えています。アプリとガイドブックというツールを活用し、リスクマネジメントのプロとしてお客さまのリスクを未然に防ぐお手伝いをすることは、お客さま目線のサービスの本質だと考えています。このツールがお客さまの安全管理体制をサポートするツールになれるように、今後とも推進してまいります。
コマーシャル自動車保険部の皆さん