身の回りのリスク・新技術・マクロトレンドに対する意識調査①

はじめに

 AIG総研では、リスクに対する人々の主観的な認識、態度、意思決定に関する調査を定期的に実施しており、直近では2022年9月に「身の回りのリスク・新技術・マクロトレンドに対する意識調査」をWeb調査にて実施しました。この調査では、定点調査という位置づけの「身の回りのリスク」に関する調査に加えて、今後実用化が見込まれる新技術に対する関心とリスク認識(社会受容性)、ならびに日本をとりまくマクロトレンドに関する認識を設問に追加して実施しました。

 本リスクコラムでは、この調査結果のなかから、人々がリスクをどのように感じているのかを、直近の結果ならびに過去の回答傾向の時系列での変化からみていきます。

主観的リスクの大きさ評価

 まずは、主観的リスクの大きさ評価についての比較です。

 直近の調査では、前回まで3カテゴリに分けていた病気・ケガへの認識を1つにまとめた一方、新たに「外国からの侵略・武力攻撃」、「気候変動・地球温暖化」という2項目を追加しています。

図1. 主観的リスクの大きさについての調査結果(「大きいリスクだと感じる」「やや大きいリスクだと感じる」の合計)

図1. 主観的リスクの大きさについての調査結果(「大きいリスクだと感じる」「やや大きいリスクだと感じる」の合計)

 前回調査でいったん全体的に下がっていた、リスクを「大きいと感じる」との回答率は、今回再び増加に転じており、概ね、前々回に近い数値となっています。また、今回新たに追加した「外国からの侵略・武力攻撃」、「気候変動・地球温暖化」の2つのリスクを「大きいと感じる」割合は、それぞれ65.6%、75.1%となりました。

リスクに対する恐怖や不安

 続いて、さまざまなリスクに対する「恐怖や不安」の大きさ、およびそれらリスクに対して日本の社会がうまく対処しているかどうかの認識についての回答結果を以下に示します。

図2. リスクに対する恐怖・不安と、日本の社会がそれらにうまく対処していると考えるかどうかについての調査結果(「そう思う」「ややそう思う」の合計)

図2. リスクに対する恐怖・不安と、日本の社会がそれらにうまく対処していると考えるかどうかについての調査結果(「そう思う」「ややそう思う」の合計)

 前回・前々回と比較し、リスクへの恐怖・不安の結果が興味深い動きを示しています。自然災害については前回減少した後今回は再び増加、病気・ケガについては増加が続いている一方、収入の途絶については減少傾向が続いています。

 また、今回新設した「外国からの侵略・武力攻撃」、「気候変動・地球温暖化」についての回答をみると、それらのリスクに対する恐怖・不安は共に76%台と、自然災害等や病気・ケガより若干低い程度のかなり高い水準にあるのに対して、それらに対し日本の社会がうまく対応しているとの回答は3割前後と他のリスク対応への評価よりもかなり低くなっています。

リスクの大きさと恐怖

 過去の研究から、リスクに対する人々の認知は、リスクの「大きさ」と「恐怖」という二次元で位置づけることが可能だと考えられています。そこで、これまでの調査結果をこの二次元でマッピングすると、以下のようになりました。

図3 リスクの「大きさ」および「恐怖」への評価の推移マップ。カッコ内は何回目の調査かを示す。

図3 リスクの「大きさ」および「恐怖」への評価の推移マップ。カッコ内は何回目の調査かを示す。

 これをみると、「病気・ケガ」のリスクは恐怖の認識が年々上昇し、今回の調査では自然災害と同等に「大きくて怖い」リスクという位置づけとなったことが分かります。感染症の世界的流行などが背景にあると想定されます。逆に、第1回調査では「病気・ケガ」と類似のリスクととらえられていた「収入途絶」リスクは、恐怖の認識がやや低下し、「病気・ケガ」とは性質の異なるリスクとしてとらえられるようになったことが示唆されています。そして、自然災害リスクへの評価は、今回の調査では第1回調査とほとんど同じ位置に戻ってきています。

 次回号では、これらリスクに対する備えについての調査結果を紹介します。

調査概要

  • 調査対象 18歳から80代までの男女
  • 調査方法 ネット調査モニター会員に対するオンライン調査
  • 調査期間 2022年9月8日から同14日
  • 調査項目 本稿添付の調査票参照
  • 有効回答件数 1,691件

(関連レポート)

AIG総合研究所

AIG総合研究所(以下、AIG総研)はAIGジャパンの研究機関として2017年12月に設立されました。AIG総研は、リスク・マネジメントに関する社会的な議論を喚起するthought leaderとして、グループ内外の様々な知見を結びつけ、リスク管理に関する提言・発信を行う情報ハブを目指しています。