1. はじめに
以前掲載のコラム「首都直下地震~複雑なプレート構造の上に位置する首都圏~」で、首都圏は3つのプレートがぶつかり合う、複雑な構造の上に位置していることを紹介しました(図1)。そのため、首都圏では様々なタイプの地震の発生が予想されています。
図1:首都圏のプレート構造
首都圏で地震が発生する仕組みは、大きく、プレート内やプレートの境界で発生する「海溝型」と、陸域の浅い所で引き起こされる「内陸型」に分けられます。海溝型の地震については、コラム「東日本大震災・津波の教訓を振り返る」で2011年に発生した東日本大震災を紹介しました。そこで、今回のコラムでは、「内陸型」の地震発生のメカニズムについて触れ、首都圏に存在する活断層について触れます。
2. 内陸型地震を引き起こす活断層
陸のプレート内では、長い年月をかけて地下の岩盤に力が加わっています。岩盤の弱い所にひずみが蓄積し、限界に達すると岩盤は断層を境に急速に動きだし、地震が発生します(図2)。過去に地震を引き起こし、将来も地震を引き起こすと考えられている断層のことを「活断層」と呼び、現在、日本では2000を超える活断層が存在しています。しかし、まだ見つかっていない活断層もあると言われており、活断層が見つかっていない場所でも地震が発生する可能性があります。
図2:内陸型地震における断層の立体断面図
活断層によって引き起こされる地震は、プレートの移動による影響を受けるものの、活動周期が千年から万年など超長期であり、発生確率は必ずしも高くありません。しかし、阪神淡路大震災や熊本地震のように突然発生し、陸の浅い場所で揺れていることが多いため、被害が甚大になる可能性があります。活断層による地震に備えるための第一歩として、まずは自身の周りにある活断層の所在を認識することが重要です。
3. 首都圏の活断層はどこにあるのか
政府の地震調査研究推進本部(地震本部)は、関東地域の陸域及び沿岸域に分布し、M6.8以上の地震を引き起こす可能性のある活断層について評価をしています(図3)。
図3:関東地域(青線域内)の活断層
発生確率が高い順に、赤色は「30年以内の地震発生確率が3%以上」、黄色は「30年以内の自身発生確率が0.1%~3%」、黒色は「30年以内の地震発生確率が0.1%未満」、灰色は「地震発生確率が不明」を示しています。首都圏において発生確率の高い~やや高いといわれている断層は、下記に位置しています。
- 「三浦半島断層群」(14・15番):神奈川県三浦半島の中・南部
- 「塩沢断層帯」(18番):神奈川県足柄上郡山北町から静岡県御殿場市
- 「深谷断層帯」(8番):群馬県高崎市から埼玉県鴻巣市
- 「立川断層帯」(12番):埼玉県飯能市から東京都府中市
- 「平山-松田北断層帯」(19番):神奈川県南足柄市から足柄上郡
- 「曽根丘陵断層帯」(22番):山梨県甲州市から西八代郡市川三郷町
なお、確率が高いものから先に地震が起こる、反対に確率が低いから地震が起こらないということではないことに留意が必要です。また、活断層によって引き起こされる地震では、震源に近い地域で、緊急地震速報より先に強い揺れが到達する可能性があります。身近に存在する活断層について知り、理解を深め、突然の揺れに十分に身構えることができない場合も想定した事前の準備を心がけましょう。
(出典)
- 文部科学省, 気象庁, 「活断層の地震に備えるー陸域の浅い地震―関東地方版」, (平成29年2月)
(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/katsudansou/katsudansou_kanto.pdf) - 地震調査本部, 「関東地域の活断層の地域評価」, (2021年9月29日利用)
(https://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/regional_evaluation/kanto-detail/) - 図1:中央防災会議, 首都直下地震対策検討ワーキンググループ,「首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)別添資料4」, (2013年12月), 1ページより
- 図3: 文部科学省, 気象庁, 「活断層の地震に備えるー陸域の浅い地震―関東地方版」, (平成29年2月), 6ページより
AIG総合研究所
AIG総合研究所(以下、AIG総研)はAIGジャパンの研究機関として2017年12月に設立されました。AIG総研は、リスク・マネジメントに関する社会的な議論を喚起するthought leaderとして、グループ内外の様々な知見を結びつけ、リスク管理に関する提言・発信を行う情報ハブを目指しています。
執筆:玉野絵利奈