Global Risk Manager

プロアクティブなサイバーセキュリティのメリットと6つのヒント

2023年4⽉20⽇ 公開

RIMS⽇本⽀部 × AIG損保

Global Risk Manager Vol.006 プロアクティブなサイバーセキュリティ・プログラムを採⽤するメリットと成功のための6つのヒント

本連載シリーズは、リスクマネジメントのグローバルな⾮営利組織、RIMSの⽇本⽀部とAIG損保の共同編集により、これから海外進出を⽬指す、またはすでに海外進出している企業のリスクマネージャーのスキルセット向上を⽬指しています。⽇々の業務はもとよりビジネスの先を⾒据えた洞察・推察にお役⽴ていただければ幸いです。

情報通信ネットワークは、現代ビジネスに⽋かせないインフラとなっています。グローバルに⽬を向けると、組織的な犯罪集団や国家ぐるみのサイバー攻撃といった重⼤な脅威も多く存在し、従来の受動的なサイバーセキュリティでは、もはや⼗分ではないのが現実です。企業のリスクマネージャーはサイバーセキュリティに対して、どう向き合えばいいのでしょうか。今回はサイバー攻撃を受ける前に先回りして備えるプロアクティブなアプローチについて解説します。

サイバーセキュリティに「万能薬」は存在しない

プロアクティブなサイバーセキュリティの重要性とメリット

英国政府の「サイバーセキュリティ侵害調査2022」によると、サイバーセキュリティリスクを特定するために⾏動した英国企業は54%。2020年の調査と⽐較して10%減少していました。ある世界的セキュリティベンダーの製品管理者は「⼤きな懸念材料とするべき」と警鐘を鳴らしています。サイバーセキュリティで危険なのは、無知であること。「弱点や脆弱性がどこにあるのかを理解しなければ、適切な対策を講じることができない」というのが、その理由です。

 

そして、サイバー脅威に対して可能な限り最善のセキュリティを確保するためには、知識に基づく推測に頼るのではなく、先回りして準備するプロアクティブなサイバーセキュリティが有効だとアドバイスしています。

 

攻撃者に悪⽤される前に弱点を特定する。攻撃される前に、その攻撃によって引き起こされる被害を予測する。これらを可能にするのが、プロアクティブなアプローチです。これによりチームは、「より効率的にタスクの優先順位を決めることができ、従来の⼿法よりも迅速にリスクを削減できる」としています。

〈プロアクティブなサイバーセキュリティプログラムを採⽤するメリット〉

  1. 脆弱性に対して賢明なアプローチが取れる(脆弱性を特定することで、サイバーセキュリティを継続的に向上させる)
  2. 規制要件の遵守につながる(脆弱性管理や侵⼊テストなどからコンプライアンス違反も発⾒でき、規制違反の多額の罰⾦を回避することにつながる)
  3. 侵害による痛みとコストの回避(サイバー攻撃によってビジネスが⽌まってしまうコスト、復旧後の信頼回復コストを抑えられる)

⼤切なのは、⾃社を「魅⼒的でないターゲット」にすること

プロアクティブなアプローチとは、具体的に何をすることなのでしょう。例えば、攻撃者がどのように企業を狙うかを模倣したセキュリティテストは、悪⽤される前に弱点を特定するのに役⽴ちます。⾃社のサイバーセキュリティの成熟度によって、どのツールをいつ使⽤するのが最も適切かは、異なります。

 

例えば、⽐較的新しくセキュリティ対策を導⼊する組織では、脆弱性スキャン、セキュリティ情報・イベント管理(SIEM)、安全保障管理などの取り組みを実⾏することから始めるといいでしょう。

 

⾃社のサイバーセキュリティが成熟化するにつれて、侵⼊テストWebアプリスキャンなど、より⾼度なツールが効果を発揮できるようになります。そして、成熟化した段階で、敵のシミュレーションレッド・チーミングなどの⾼度なツールを使⽤することで、可能な限り⾼いレベルの防御を実現することができます。

 

訓練と投資を重ねるほど、より効率的で準備の整ったサイバーセキュリティ環境を構築できますが、サイバー攻撃から100%安全な企業はありえません。多くの企業が⽬指すべきは、⾃社をできるだけ魅⼒的でないターゲットにすることであり、攻撃者となりうる⼈物が、より簡単で準備の整っていない代替策に向かうように仕向けることが重要です。

プロアクティブなサイバーセキュリティを成功させるための6つのヒント

プロアクティブなサイバーセキュリティの成功は、強固な情報セキュリティ戦略の重要な要素となります。以下は、あらゆるビジネスに応⽤できる6つのヒントです。

1. 何を保護する必要があるかを理解する

確かなインベントリと監査に基づいて保護しようとしているものを明確に理解することで、セキュリティチームは仮定に基づいてではなく、経験に基づいて意思決定を⾏うことができます。

2. サードパーティのエコシステムを理解する

統計的に、多くの情報漏えいはサードパーティシステム内のセキュリティ脆弱性によって引き起こされているため、ビジネスパートナー、サプライヤー、請負業者がアクセスできる範囲を理解することが必須です。

3. ⼈とプロセスを理解する

セキュリティチームは脆弱性を適切に評価し、修復するだけでなく、セキュリティ事故の調査、解釈、対応における基盤となる存在。チームの誰もが⾃分の役割を知り、ためらいなく⾏動に移せることが⼤切です。チーム間の連携とコミュニケーションは、侵害が発⽣した場合の解決までの時間、修復までの時間を早めることにつながります。

4. 攻撃者の⽴場で考える

ビジネスリーダーやセキュリティチームは、防御がどのように機能するかを考えるのではなく、防御が実際に今どのように機能しているかを基に意思決定する必要があります。真の強みと弱みを知るということは、攻撃者がどのようにしてアクセスを獲得するのかを特定でき、攻撃が成功するのを未然に防ぐための対策に役⽴ちます。

5. 脆弱性評価、侵⼊テスト、敵対者のシミュレーションに投資する

これらのツールはセキュリティをより効率的にしてくれます。投資を⾏うタイミングは、企業のセキュリティプログラム全体の成熟度に依存しますが、定期的に脆弱性評価を⾏うことで簡単に解決できる問題を取り除くことが可能です。侵⼊テスト敵対者シミュレーションには特定のフレームワークと訓練された実務者が必要ですが、社内で侵⼊テストチームを結成する、あるいはこれらに特化した第三者機関を活⽤することで実施できます。

6. テスト、テスト、そしてまたテスト

残念ながら、セキュリティ事故を防ぐための魔法のレシピは存在しません。予防、検知、対応の3つを戦略の中核的な柱として継続的かつ反復的なプロセスを構築する必要があります。予防制御の侵⼊テスト、検知制御の単体テスト、対応制御のレッドチームによる定期的なテストは、攻撃者に悪⽤される前に、新しい脆弱性を迅速に発⾒する最⾼の機会を与えてくれるとともに、セキュリティ・コントロールの体系的な改善に役⽴ちます。

詳しくはRIMS⽇本⽀部の
【Web特別版】2022年12⽉号をご覧ください。

出典

本記事は、リスクマネジメントのグローバルな⾮営利組織、RIMSが発⾏する機関誌「Risk Management」【Web特別版】2022年12⽉号の記事を、RIMS⽇本⽀部とAIG損保が翻訳・共同編集したものです。

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