ライアン・ガスタフソンとステファン・モートンは、変化する世界の中でグローバル・プログラムが果たす役割について考察します。
AIG ナレッジ & インサイト グローバル・プログラム:保険を適切に維持すること
グローバル・プログラム:保険を適切に維持すること
海外に進出している企業は、世界的に直面しているリスクについて、どんな関心事を持っていますか?
ステファン・モートン氏(SM):企業のお客様やブローカーと話をするときによくあるテーマは、どうすれば私たちはもっと(現実に対して)適切に対処できるのか、つまり、どうすれば現実に対してより保険は相応しくできるのかということです。なぜなら、バランスシートの性質が変化しているからです。サイバーも、私たちがグローバル・プログラムについて話すたびに登場するテーマです。これは本質的に国境を越えたリスクであり、マーケットには複数のソリューションが存在しますが、まだ成熟したソリューションではなく、著しく成長を見ることができる分野のひとつです。
ここ数年にわたり現在(この記事が執筆された2019年)、特にヨーロッパとイギリスでは、ブレグジットについて、どうすれば保険プログラムを 「ブレグジット対応」 のものにできるかについては多くの議論が交わされています。AIGのブレグジットへのアプローチは、「最善を期待しつつも最悪に備える」 というものであり、私たちが設定した解決策は、合意なき離脱のシナリオに対処するものです。私たちは、英国のリスクとEUのリスクを2つの完全に異なる方法でカバーする能力を持っています。
そして最後に、BEPS(税源侵食と利益移転)、BEAT(税源浸食濫用防止税)、EUが提唱しているデジタルサービス税、新関税、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉決裂(米国離脱)はすべて、この12カ月間にわたり起きた出来事であり、商取引のあり方が変わったことを示しています。これらの問題はすべて、取引方法や現地の規制の遵守において、企業にとって課題となっています。
現在の環境下でグローバル・プログラムを使用する利点は何ですか?
ライアン・ガスタフソン氏(RG):グローバル・プログラムの利点は常に変わりません。ほとんどの場合、プログラムは、補償の水準をコントロールすることを目的としており、リスク管理責任者が,世界中で抱える補償とリスクの水準を把握していることを確認するためです。そのためには、知識、一貫性、そして補償の確実性を持つことです。
また、財務的な側面もあります。グローバル・プログラムを持つことは、より経済的になることでしょう。また、グローバル・プログラムを持っている場合は、複数の保険会社で複数の異なる保険証券を持つこととは違って、保険会社やブローカーにとってより戦略的なクライアント企業であると言ってもよいでしょう。
"AIGのブレグジットへのアプローチは、 「最善を期待しつつも最悪に備える」 というものです。"
ステファン・モートン
キャプティブ保険会社は、どのようにして組織の保険プログラムを補完することができますか?
SM:確かに、より多くの資産が無形化しつつあり、そして、多くの巨大な企業のバランスシートが無形資産で構成されている世界では、これらの新しいリスクのためのインキュベーターとして、キャプティブ保険会社が果たす役割があります。事業保険会社や再保険会社と比較すると、キャプティブ保険会社は、現在の保険マーケットでは広く受容できないリスク、例えば、罰金や罰則、ソーシャルメディアのリスクなどを受け入れることができる可能性があります。
なぜ強力なローカルネットワークを持つことが重要なのですか?
RG:BEATを導入した米国の税制改革のように、短い期間で新しい法令が制定される様がますます見られます。その知識を現場で身につけることは、プログラムへの期待値予測と、最適化のためにも、非常に重要です。実際、現場での目と耳に取って代わるものは何もなく、現地における規制の解釈の重要性は過小評価することができません。
これに関連した他の側面は、正しい仕組みを持つことです。つまり、現場の人だけでなく、適切なレベルの監視を行うことを意味します。その情報をすべての人が利用できるようにするということです。
ある国が再保険の出再基準を変更しようとしている場合、例えば、その国の外へリスクを出再する割合のレベルを上げるとしたら、その機会を認識してもらうために、お客様企業に情報提供することは重要です。物事は大変速いスピードで変化するため、プログラムを最適化できるよう、実際に違ったやり方で行い、かつ十分な時間的余裕を与える必要があります。
現地での拠点の存在は、どのようにして特定の課題を克服するのに役立ちますか?
SM:一帯一路や巨大なインフラ・プロジェクトなど、アフリカ、中東、アジアでは、今や非常に大きなビジネスチャンスがあります。ビジネスが拡大しようとしている市場のいくつかを見てみると、往々にして現地の保険マーケットはあまり発達していません。時には、現地規制当局と協力して、当局が導入しようとしている要件や、クライアント企業にどのような影響があるかを本当に理解する必要があります。
また、特に新興市場では、現地強制保有率が増加傾向にあることから、課題が生じる可能性もあります。それは、潜在する大規模な損失が発生して、過度のリスクと負担がかかり、現地保険マーケットのキャパシティが完全に浸食される可能性があるということです。海外進出している企業は、重大なリスクを抱えており、相当の保険責任限度額を必要としています。そのため、私どもの役割の一部は、これらの課題対処への案内役であること、そして規制当局とのコミュニケーションをとることです。場合によっては、こういった環境下で、お客様のために提唱活動を行うこともあります。
企業が重大な損害を抱える状況、そして、同時に潜在的な評判へのダメージ、コンプライアンス違反の可能性、さらには現地の規制要件との不整合が発生した場合の処分にも対処しなくてはならなくなる状況を避けることがベストです。海外進出企業では、取締役や役員は気づかないうちに、突然かなり複雑で際立って目につく(社内的にも社外的にも)ことになる責任に晒される可能性があります。
現地で保険証券(ローカルポリシー)を持つことは、とても基本的なことです。本当の意味でローカルポリシーに取って代わるものはないでしょう。これは当社も関わりながら、状況を明確にし、現地のベストプラクティスと規制要件に関するガイダンスを提供できることを意味します。当社は、必要に応じて規制当局と連携し、コンプライアンスを確保するとともに、事故が発生した場合には積極的に事故対応をハンドリングします。
"BEATを導入した米国の税制改革のように、短い期間で新しい法令が制定される様がますます見られます。"
ライアン・ガスタフソン
グローバル・プログラムから価値を引き出し、サービスを提供する上で、テクノロジーの役割は何ですか?
RG:テクノロジーはグローバル化が進む理由のひとつです。少しペースは落ちていますが。そして、世界が小さくなり続けている理由のひとつです。ローカルポリシー発行の観点からも、コンプライアンスの観点からも、そして、損害サービスの観点からも、市場をリードするテクノロジーに投資することなく、グローバル・プログラムを実行できるという時代は当に過ぎています。
その数は圧倒的です。AIGでは、何千ものグローバル・プログラムを管理し、世界中で毎年何万ものローカルポリシーを発行しています。そのためには、それに相応しいレベルのテクノロジーが必要です。メールによるコミュニケーションだけではできません。当社では、最適なプログラム管理の導入と、クライアント企業がさまざまな国や地域でリアルタイムでのプログラムパフォーマンス監視を可能とするシステムを開発しました。
グローバル・プログラムを支えるテクノロジー基盤を持たない保険会社は、限られてくることでしょう。それは、非常に大規模で複雑なプログラムを扱うことができるプレイヤーが比較的少ない理由のひとつです。プログラムのアーキテクチャを構築し、ローカルポリシーの発行や保険料精算など、プログラムを管理し、そして損害履歴を電子的に把握することが求められます。
技術は、透明性を高め、管理を強化し、抽出される損害データから洞察を加えることができるという点で非常に重要です。損害からよりよい情報を得ることができ、それを活用することでより戦略的になり、プログラムのライフサイクルの最初の部分、つまりプログラムのアーキテクチャにフィードバックすることができます。テクノロジーを活用して、よりプロアクティブな方法で管理することも重要です。
著者:
AIGヨーロッパ・マルチナショナル・ヘッド ステファン・モートン
AIGノースアメリカ・マルチナショナル・ヘッド ライアン・ガスタフソン
※ この記事はCaptive Reviewの「Global Programs supplement」に掲載されました。
上記の「ナレッジ&インサイト」文書は、グローバル保険会社であるAIGの知識や知見を広くご紹介するために、海外のAIGが公開している文書を翻訳したものです。
文書内で触れている商品やサービスのなかには、AIG損保では提供していないことがあります。「ナレッジ&インサイト」の原文は、下記リンクから参照できます。
なお、以下のリンクをクリックするとAIG損害保険株式会社のページからAIG, Inc.(AIG米国本社)のサイトに移動します。
https://www.aig.com/knowledge-and-insights
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