海外進出白書

2022年10⽉31⽇ 公開

海外ビジネス担当265⼈に聞く! #1 ウクライナ危機の影響とリスク管理の重要性

2022年2⽉、ロシアがウクライナへ侵攻を開始しました。ウクライナ危機は、海外ビジネスに影響を与えるリスクがあります。今後の⽇本企業の海外ビジネスを考えるにあたって、こうしたリスクの管理は、ますます⽋かせないものとなっていくでしょう。

 

「海外進出⽩書リスク管理版 2021-2022(発⾏:株式会社Resorz/制作協⼒:AIG損害保険株式会社)」では、「ウクライナ危機の影響」を切り⼝として、海外進出企業の担当者へ「リスク管理」に関する実態調査を実施。先⼈たちが何を考え、何を実施し、どうなったか、調査データをもとに考察していきます。この記事が、海外ビジネスを展開する際のヒントとなれば幸いです。

調査概要について

調査概要と回答企業のプロフィール

本調査では、海外進出を検討している・実施している企業の担当者にアンケート調査を⾏いました。調査概要と回答企業は以下のとおりです。

海外進出企業の実態調査

調査⽅法 :インターネットによる⾃主調査
調査対象 :⾃社の海外ビジネス展開を検討したことのある担当者265名
調査期間 :2022年 4⽉18⽇ 〜 5⽉10⽇

アンケート回答企業の業種

アンケート回答企業の所在地域

アンケート回答企業の売上規模

海外ビジネスの明暗をわける、成功企業の分岐点とは

⽇本とは環境の異なる海外ビジネスにおいて、事業を存続させていくとは簡単ではありません。海外ビジネスにおいて、事業をスタートさせるだけでなく、撤退せずに3年以上継続させられていることは、成功と⾔えるのではないでしょうか。そこで本調査では「海外事業を3年以上実施している企業」を「成功企業」と定義して、分析を⾏っています。

ウクライナ危機の影響と不測のリスク

ウクライナ危機が海外進出企業に与えた影響とは?

2020年度に「新型コロナウイルスの影響」についてアンケート調査した時と⽐べ、ウクライナ危機は⽇本企業の海外ビジネスにそれほど⼤きな影響を与えなかったという結果になりました。ただし、直接の影響は受けていなくてもサプライチェーンからの影響が⾃社に届くまでにはタイムラグがあること、調査期間後に追加の制裁措置が出されたなど、時間の経過とともに多少の影響を受ける企業がでてくることも考えられます。

回答結果:ウクライナ危機の影響について教えてください

⼀⽅で、「リスクを感じたかどうか」の質問に関しては、85%以上の企業が少なからず、リスクを感じたという結果となりました。

回答結果:ウクライナ危機を受け、海外ビジネスにおけるリスクを感じたか?

海外進出企業は、ウクライナ危機によってどんなリスクを感じているのか?

⼤別すると、「政治・紛争などによるカントリーリスク」と「ビジネスを⾏う上での取引先や消費者とのトラブル」に分けられることがわかります。そして、前者をより⼤きなリスクと捉えている企業が多いようです。

回答結果:海外ビジネスにおいてどんなリスクを感じているか?

その他の回答例

  • パートナー会社との意思疎通、⽅向性合わせ、交渉/⾔葉の障害
  • 材料調達の難航/サプライチェーン構築の難しさ
  • 社員の規則違反
  • ローカルの法律適⽤理解の仕⽅
  • COVID-19の感染拡⼤
  • 円安によるリスク(資材・材料調達費の⾼騰)

 など

不測のリスクは⽣じるもの。「リスク管理」の重要性

リスクに備え、影響を最⼩限に抑える。「リスク管理」という考え⽅

新型コロナウイルス感染症をはじめ、ミャンマーでのクーデターやスエズ運河の座礁、ウクライナ危機など、ビジネス運営に⼤きく影響を与える出来事は毎年必ず⽣じています。尖閣諸島問題、リーマンショック、東⽇本⼤震災、アメリカ⼤統領交代による政策変更など、数え上げればきりがないでしょう。
こうした出来事によって影響を受ける業種や国は様々であり、その影響についても予測することが難しいケースがほとんどです。そうした中、重要となるのが「リスク管理」という考え⽅です。「不測のリスクは⽣じるもの」という前提のもと、あらかじめリスクに備え、影響を最⼩限に抑えようという考え⽅です。

 

例えば、前述の「カントリーリスク」は予測が難しいものの、「危機管理費⽤保険」など予算化することで管理できます。また、「取引先/消費者/輸送などに関するリスク」は、保険や契約書、商標・特許などによって管理することが可能です。

成功企業は導⼊している!?「リスク管理」の導⼊状況

多くの企業が海外ビジネスにおけるリスクを認識していることがわかりましたが、どれだけの企業が、こうしたリスクをリスクとしてしっかり管理できているのでしょうか。

回答結果:「リスク管理」についての検討状況について

全体として、リスク管理に関⼼は⾼いものの、導⼊できている企業は1割に満たないという結果となりました。検討している企業を合わせても15%に留まってしまっています。
 

売上規模で⾒ると、どうでしょうか。

回答結果:売上規模別「リスク管理」の検討状況について

売上規模500億円以上の企業の導⼊割合が圧倒的に⾼くなっています。これは、売上規模が⼤きければ、そのぶんリスクも⾼まることを反映した結果でしょう。売上規模10億円〜500億円の企業で、全体と成功企業を⽐較すると、やはり成功企業のほうが導⼊割合は⾼くなっています。

約15%の海外進出企業が、⾃社で損失を被った経験あり

成功企業の「リスク管理」導⼊状況から、海外事業を継続していくことと、「リスク管理」を実施していくことには少なからず相関関係が認められそうです。
実に約15%の企業がリスクを回避できずに損失を被った経験があると回答しました。

回答結果:各種リスクを回避できず、⾃社で損失を被ったリスクがありましたか?

回避できなかったリスク例

  • 資⾦に関するリスク(⽀払遅延、売上未⼊⾦、業務委託報酬⼀部未払い、為替リスクなど)
  • 商品に関するリスク(撤退に伴う在庫廃棄、模倣品対策、仕⼊品の不備、商標権裁判など)
  • ⼈材に関するリスク(不当解雇訴訟、現地の協⼒会社選び)
  • 新型コロナに関するリスク(⼯場閉鎖措置、出勤禁⽌命令、現地社員の医療費負担、コンテナ船不⾜による遅延を理由とした取引拒否、物流封鎖による輸出⼊停⽌、航空便キャンセルなどの配送リスクなど)
  • 政治に関するリスク(現地国政府の不履⾏、政変による営業停⽌、関税変更など)

 など

次回は、海外進出企業が導⼊しているリスク管理の種類、かけている年間予算、運⽤体制などについて考察していきます。

出典

本原稿および全てのグラフは、2022年4⽉18⽇〜 5⽉10⽇の期間に、海外ビジネス⽀援プラットフォーム『Digima 〜出島〜』が「⾃社の海外ビジネス展開を検討したことのある担当者265名」を対象に実施したアンケートをもとに作成された「海外進出⽩書〈リスク管理版〉2021-2022年版」を出典元とし、AIG損保で編集したものになります。

海外ビジネス⽀援プラットフォーム「Digima 〜出島〜」のページ(外部のサイトに移動します)

詳しくは「海外進出⽩書リスク管理版 2021-2022
(海外ビジネス担当265⼈に聞く!ウクライナ危機とリスク管理の実態)」を
ご覧ください。

本記事で割愛した質問と回答などもあり、より詳しい内容をご覧になれます。

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