日本と米国では法制度が大きく異なるため、米国に進出する企業に日本では考えられないほど高額な賠償命令が下され、企業の財務に大きな影響を与えるケースが報告されています。こうした訴訟リスクを回避するためには、日本と米国の法制度の違いを理解し、専門知識を持った弁護チームによる、迅速なサポートが受けられる体制を構築しておく必要があります。
米国進出による訴訟リスクとその対策について、AIGグループで「リーガルガイド」をまとめましたので、抜粋版をご紹介します。
アメリカでビジネス展開する 日本企業の皆さまへ
米国進出前に知っておきたい米国法制度と訴訟対策
日本と米国の法制度の違い
米国へ進出する企業が訴訟リスクを軽減させるには、日本と米国の法制度の違いを理解することが重要です。
1. 米国では民事訴訟においても陪審員裁判が行なわれる
陪審員の構成や心証によって、判断が大きく変わる可能性があります。(裁判官裁判とは違った訴訟戦略が必要)
2. 米国法の基本は各州政府が制定する州法である
米国では各州で行なわれる裁判において、同じような事件で下された判決が先例となって、その後の同種の事件における裁判についても拘束力を持つこととなります。つまり、慣習に拠って成立する法をもとに司法判断がなされるため、裁判の結果も州ごとに異なることがあります。
米国進出企業の訴訟事例
販売した商品や提供したサービスに欠陥があると、米国の裁判では日本では想定できないスケールの賠償責任が生じることがあります。
1. 米国には日本では認められていない懲罰的損害賠償がある
原告に賠償を支払う目的ではなく、被告に罰を与える目的で命じるのが懲罰的損害賠償で、「被告の行動が罰を受けるのに値する」など、一定の条件を満たす場合に適用されます。
懲罰的損害賠償の場合、陪審員が数十億単位という高額な賠償金の支払いを命じるケースがあり、米国進出企業に厳しい判決も認められます。
2. 米国では責任の所在があいまいなまま、複数を相手に訴訟を起こす
米国の訴訟では、けがを負った責任がどこにあるのかが分からないまま、複数の相手を被告として訴訟を起こすことがしばしばあります。そのため、米国進出企業が訴えられた場合には、自社以外に賠償責任を負う第三者の存在を正確に把握し、補償を求めることで賠償額を減らせるケースもあります。
米国民事訴訟の流れ
米国の民事訴訟は裁判官よりも弁護士に依存するケースが多く、裁判の行方に大きな影響を与える傾向にあります。訴状が届いたら、適切な法の専門家にできるだけ早く相談し、迅速に対応することが求められます。
米国の民事訴訟の流れとポイントは次の通りです。
1. 訴えの却下を申し立てる
訴状が届いた場合、日本では訴えを認めるか否かを回答しますが、米国では訴え却下の申立て事由があれば、訴えの却下を申し立てることができます。
2. 裁判外での解決法を探る
裁判所以外で解決する方法として「調停」または「仲裁」によって和解を行う方法があります。高額の争訟費用の発生と裁判敗訴時の高額な賠償金支払いを回避するために有効な手段といえます。
3. クラス承認を避ける
米国の民事訴訟には、個人の原告が同様の訴訟を起こすグループを代表して訴えを起こす「クラスアクション」があります。
「クラスアクション」として提訴されると被告のリスクは著しく増大するためクラス認可の申立てに対する防御は極めて重要となります。
4. 審理後の申立てで賠償額の引き下げを図る
裁判に負けた場合でも、審理後の申し立てや控訴裁判所への控訴によって、陪審員の評決に異議を唱えることができます。時として、被告に過失があっても、裁判所が賠償額を引き下げることがあるため、重要なプロセスです。
米国での訴訟リスクに備える
訴訟が頻発する米国で訴訟リスクを軽減させるためには、専門的な知識を持った弁護チームを速やかに編成し、解決に向けた迅速な対応が求められます。
米国のAIGでは、米国内で組織した社内弁護士を含む各業種の専門チームと、北米の約900の弁護士事務所との提携ネットワークを有しており、案件に応じて適切な弁護士を紹介しています。また、AIGならではの豊富な経験をもとに、訴訟に持ち込むメリットとデメリットを分析し、裁判外の紛争解決手続きを積極的にサポートするなど、訴訟ダメージの軽減をめざす「訴訟管理サービス」を提供しています。
訴訟管理サービス
- 訴訟の内容に応じて適切な弁護士を手配
- 弁護士報酬が適切な水準になるように費用管理サービスを提供
- 本社所在国で提携可能な弁護士を手配するなど国境を越えてサポート
なお、AIG損保ではより詳しい情報を掲載した本リーガルガイドの詳細版をご用意しています。本リーガルガイドの詳細版でカバーされるトピックスは下記の通りとなっています。
- はじめに
- 基本的な構造
- コモン・ロー(慣習法)
- 対人管轄権
- 一般的な請求
- 5.1 過失
5.2 保証違反
5.3 製造物責任(厳格責任)
5.4 詐欺・虚偽表示
5.5 補償・求償
5.6 出訴制限
- 損害賠償
- 民事訴訟手続
- 7.1 第1段階: 訴答
7.2 第2段階: ディスカバリー(証拠開示)
7.3 第3段階: 略式判決
7.4 第4段階: トライアル(事実審理)
7.5 第5段階: 訴訟
- ADR(裁判外紛争解決)
- 問題のある管轄および不法行為法改革
- 訴訟チェックリスト
- 最後に
- 詳細版をご希望の方は下記よりお問い合わせください。
海外リスク管理についてのご相談は
米国進出企業が訴訟リスクに備えるには、保険金で訴訟費用や賠償費用をカバーするだけでなく、専門知識を持った弁護チームによる迅速なサポートが欠かせません。
AIG損保はAIGのグループ力を生かし、訴訟社会の米国で活躍する企業のリスクを幅広くサポートしています。
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